顧客側の担当者の異動がきっかけで、サブスクリプション契約を解約されてしまう──法人向けの商材を取り扱っていると、こうしたことは避けて通れない。
特に、提案した商材の導入を進め、うまく活用してくれる「チャンピオン顧客」は、社内の異動の対象になりやすい(前編参照)。
しかし、指をくわえて見ているわけにはいかない。顧客の異動をなるべく早く知るためには何をしたらいいのか。また、異動後にこれまでと同様にサービスを活用してもらうため、どのようなアプローチをすればいいのだろうか。
日ごろからチャンピオン顧客のみに頼らず、顧客との関係性を1人から複数人へ拡張していれば、突然の異動の影響を受けづらくなる。一方、顧客の異動自体がなくなるわけではない。
そのため、まず大切になるのは異動を事前に検知することだ。
当たり前だが、異動などの人事情報は機密性が高いので、こちらが黙っていて勝手に顧客が教えてくれることはまずない。積極的に情報を収集する必要がある。
参考にするのは、公開情報だ。上場企業であれば一定役職者の人事情報は公開されているし、決算期も分かるのでどのあたりで人事異動が起こりそうかという予想もつく。まずはこういった情報は最低限押さえておくべきだろう。
ただ顧客は、上場企業の役職者ばかりではないだろう。公開情報だけでなく個別のやりとりからの非公開情報も重要になってくる。非公開情報については、ハイタッチ(人的なコミュニケーション)とテックタッチ(デジタルツールを介したコミュニケーション)をハイブリッドで活用して検知することがポイントだ。
まずハイタッチで聞けることは、異動が起こるとしたら通例どういった時期に起こるかだ。過去に異動した時期はいつだったか、直近周囲で起こった異動は何月ごろだったか、そういった過去の事実であればヒアリングしやすく答えやすい。
そして時期感がつかめたらその時期に差し掛かったあたりで、「そろそろ来期のご検討も進んでいるかと思いますが、体制などは変更なさそうでしょうか?」といった具合に、こちらから異動の有無や気配を聞いてみるとよいだろう。
聞くタイミングや場をうまく選べば教えてもらえる確率は高くなる。体制の話は顧客社内でも公開範囲が限定的なこともあるので、複数の関係者が同席している場で質問しても濁されるだけだ。口頭や電話で、かつ1対1の場でお伺いするのが良い。
またテックタッチでも異動のタイミングを察知することは可能だ。サービスの利用者が異動する場合は、顧客社内でも引き継ぎやシステムの管理者権限の変更などをする必要があることが多い。そういった異動の際に必要な手続きを、まとめて手引きコンテンツとして配信・公開しておけば、利用者がそれらのコンテンツを閲覧したタイミングを察知できる。
そういったデジタル上でのトリガーを元に顧客の状況を察知し、適切なアクションにつなげていくのは、まさにテックタッチの領域だろう。
このように公開情報、そしてハイタッチとテックタッチを駆使して顧客の状況を的確に察知し、先方からの連絡が来る前に能動的にコンタクトを取れれば、解約リスクを回避できるだろう。
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