セルフレジによる万引きにはさまざまな手法があります。その一つが「バナナトリック」と呼ばれるものです。
米国のセルフレジでは、生鮮食品を購入する場合、バーコードがついていないためスキャンできません。その代わりはかりが搭載されているセルフレジに商品を置き、タブレット画面から商品を選びます。
例えばオーガニックのケールを1束買う際は、タブレット画面から、「オーガニックケール」を選択します。すると、登録済みの1ポンドあたりの値段と実際の重さを計測した値段が表示され、買い物客がOKを押すとその商品がセルフレジに登録されます。
ここで、1ポンドあたりの単価が高い「オーガニックケール」をあえて選ばずに「オーガニックではない普通のケール」を選ぶ人もいれば、もっと悪質なものになると単価が一番安い生鮮食品アイテム(ノンオーガニックのバナナやニンジン)を画面から選択する人が多いのです。
もう一つの万引き手法が「スキャンスキッピング」です。
通常は、セルフレジではスキャンしていない商品が買い物袋エリアに置かれると、重さの差分から問題を検知しています。しかし、そもそも商品をスキャンせず、買い物袋エリアにも置かずにそのままお店から持って出てしまうケースもあるのです。
アパレル商品など万引き防止のタグが付いている商品とは異なり、スーパーの商品はお店から持ち出してもその場での検知が難しいことが背景にあります。
このように増加するセルフレジでの万引きに対応するために、小売店舗はどのような対策を打っているのでしょうか。ウォルマートを例に紹介したいと思います。
ウォルマートでは、スキャンされずにショッピングバッグに入った商品を検知するために、「Missed Scan Detection」と呼ばれるシステムを活用しています。セルフレジと有人レジの両方に、AIを搭載したビジュアルスキャナーとカメラを設置し、AIの機械学習技術を用いてスキャンされていない商品を検知することで、ロスを削減してきたのです。
同社によると、「われわれは、過去3年間で5億ドル以上の投資を行い、店舗や駐車場における犯罪の防止、低減、抑止に努めてきました。店舗やコミュニティーの安全を守るために、人材、プログラム、技術に継続的に投資しています」ということですから、ここ数年でロス抑制などへの取り組みを特に強化していることが伺えます。
このような対策をとる小売店舗は増えています。
例えば盗難防止システムの開発を手掛けるStopLift社では、スキャンしていない商品がカートに入っている疑いがあるとき、リアルタイムで店員に知らせる仕組みを提供しています。
セルフレジエリアにカメラを設置し、その情報とPOSデータなどをかけあわせ、AIやコンピュータビジョン技術を駆使して物体検出するのです。スキャナーを通過させずに商品をカゴに入れたり、スキャンされていない商品をショッピングカートに入れたままにしたり、スキャン中にバーコードを隠したりした場合、警告を発して店員に通達するよう作られています。
なお、このStopLift社の技術は、POS大手のNCRに2018年に買収されたため、今後は多くの小売店舗で導入されるようになるかもしれません。
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