なぜ、フェイスブックはメタバースを推すのか。背景には、同社のビジネス的な展望が不透明になりつつあるからだと見ている。
フェイスブックはGAFAの一角として名を連ねているが、実は他の3社と比べ立場が少し違う。というのも、G=グーグル、A=アップル、A=アマゾンの3社はオンライン上のサービスだけでなく、ハードウェアなども製造販売している。パソコンやスマホなどのプラットフォームを、自分たちが提供している。
その一方で、フェイスブックにはそうしたものがない。インターネットでソフトやアプリを提供しているが、アップルやグーグル、マイクロソフトが提供するOS(基本ソフト)の上で動くため、両社の存在がなければ今のようなSNSサービスは提供できない。つまり、運営は彼らのさじ加減で大きな影響を受けるのだ。
それを思い知ることになったのが、21年5月にアップルのiOSアップデートで話題になった一件だ。アップルは、iOS14.5から「アプリのトラッキングの透明性」(ATT)を導入した。アプリなど利用者のトラッキング(追跡)を許すかどうか、利用者自身が決めることができるようになったのだ。
個人が追跡を拒否すれば、オンラインでの動きやデータを集めることができなくなるので、利用者データなどを元に広告料を得ているフェイスブックにとっては大打撃となる。利用者のデータが集まらなくなる恐れがあるからだ。
残念ながらフェイスブック側には、アップルの一方的な方針変更に打つ手がない。アップルやグーグルが“本気”を出せば、フェイスブックのビジネスはたちまち行き詰まってしまうことになるのだ。
もちろんフェイスブックも、自分たちの立ち位置をよく認識している。弱点を理解しているので、新たな事業を模索しなければいけない。そうした中で、メタバースに注目したのではないだろうか。この動きは、フェイスブックが仮想通貨「リブラ」を世に送り出そうとしたときと、どこか似ている気もする。
だからこそ、ザ・ヴァージで「(フェイスブックにとっての)次のチャプターはメタバースの構築に貢献すること」とし、投資も行うとザッカーバーグは述べているのだろう。しかも専門部署を立ち上げて、数百人の雇用を行うらしい。
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