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次に来るのは「メタバース」なのか フェイスブックが動く世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2021年08月11日 10時57分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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デジタル版の自分

 現在、実世界では、パソコンやスマホなどから大量の個人データが吸い上げられている。例えば、コミュニケーションや検索履歴などから、素性、年齢、仕事、趣味、経済状況、日々の言動にからむデータも集めることができるだろう。

 そうしたデータを元に、フェイスブックやグーグルはビジネスを展開(ターゲティング広告など)していて、莫大な利益を手にしている。それらのデータをサイバー空間上で「組み立て直せば」、実社会の自分と同じような「キャラクター」を作ることができるだろう。いわゆる「デジタルツイン」(デジタル版の自分)だ。

 デジタル版の自分を、サイバー空間の仮想コミュニティーで住まわせる。周りには家族、仲間、同僚などが存在し、それぞれがその仮想コミュニティーで暮らし、コミュニケーションは「そっち」の世界でやる。電子メールはあまり使われなくなり、その空間で電子ファイルも「手渡し」できる。

 イメージとしては、ゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』がさらに実生活に近づき、人々が日常を過ごしているような感じだろうか。しかも、仮想空間だけでなく、それが実世界にも当てはめることができるようになるのではといった指摘もあって、もしそれが実現すれば、映画『マトリックス』のような世界観がイメージできる。

 筆者もそんな時代が実際にやって来るのではないかと妄想を膨らませてきたが、いまの子どもたちがやり始めていることを考えると、それが現実味を帯びてきているような気がする。5GやIoTがどんどん広がっていく中で、今以上に通信もスムーズに行われ、データも集まっていくだろう。

グリーもメタバース市場に参入するという(出典:グリー)

 そしてフェイスブックは、そこに新たなビジネスチャンスを見ている。もちろん、そう考えているのは同社だけではなく、ソーシャルゲームで知られる日本のグリーも、今後数年でメタバース事業に100億円規模の投資を行う予定だという。

 人々の概念や生活様式を変えてしまうような「Next Big Thing」(次なる大ブーム)は、メタバースになるのだろうか。目が離せない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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