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日本組織に「金メダルかじり」的おじさんがはびこるワケ河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)

» 2021年08月13日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 涙したのは女性だけではありません。男性たちの中にも「出世したけりゃ、早く嫁をもらえ」だの「まだ、子どもできないのか? 作り方知ってるのか?」だのと敬意なき暴言を浴びせられ、傷ついた人たちがたくさんいました。「笑ってやり過ごすしかない」という究極の選択を余儀なくされた人たちです。

 そういう人たちのことを、1ミリも想像できない人たちがいる。「生きづらさ」という言葉の裏に潜むのは、「敬意のなさ」です。自分より“上”の人には絶対に言えないことを、“下”と見下した人には言えてしまうのです。

 いずれにせよ、「悪意はなかった」「嫌がらせのつもりはなかった」という人たちの最大の問題は「コミュニケーション力の低さ」といっても過言ではありません。セクハラの多くが飲み会などで発生しているのも、「コミュニケーション力の低さ」が関係しているのです。

上に立つ者の「コミュニケーション能力の低さ」が問題だ(画像:ゲッティイメージズ)

 職場では、パワハラ、セクハラ、モラハラ、など、ハラハラだらけで部下とのコミュニケーションにビビっている“おじさん社員”が、自分のコンフォートゾーンである「飲み屋」に踏み入れた途端、職場でクローズしていたコミュニケーションの扉を全開する。が、何を話していいのか分からない。

 そこで、つい「彼氏/彼女はいるのか?」というセクハラになりかねない発言をしてしまったり、下品なネタで笑いを取ろうとしてしまったり、カワイイ女性部下が素直に自分の話を聞いてくれると、「ん? ひょっとして……」などと“勘違い”してしまったり……。

 その結果、「嫌がらせの認識は全くなかった」「最大の愛情表現だった」「あのときは非常にフレンドリーな感じだった」と、「だってだってあのときはさぁー」と悪意なきセクハラだったことを強調するのです。

 日本のおじさんたちのコミュニケーション能力の低さは、かなりの問題だと私は感じています。

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