「希望退職を募ると辞めてほしくない人から手を挙げる。この事態をどう防げばいいのでしょうか?」
こんな相談を「またか……」というほど聞かされる日が続いています。時には経営者が、時には人事担当者が、あるときは“現場”の人たちが「辞めてほしい人は居座り、優秀な人ほど辞めてしまう」と嘆いています。そもそも希望退職を「年長者のリストラ」の手段にしていること自体が問題なのに──実に勝手です。
東京商工リサーチが3月31日に公開した「早期・希望退職実施状況」によると、2021年1〜3月に早期・希望退職者を募集した上場企業は41社(前年同期23社)で、前年同期の約2倍のペースで推移していることが分かりました。
人数も既に9505人を数え、前年同期(4447人)の2倍以上。リーマン・ショック直後の09年(1万60人)より若干少ないとはいえ、今後はさらに増えていくことが予想されています。
今回の「年長者のリストラ」がリーマン・ショック時と大きく違うのは、赤字リストラだけではなく、「コロナを言い訳にしている」企業が少なくないという点です。
実は、新型コロナウイルスの感染拡大前から「年長者は今のうちに切っちゃえ!」とばかりに黒字リストラが増えていました。「同一労働同一賃金」が法制化され、「70歳までの雇用義務化」も実現を見据えているので、「人=コスト」と考える企業は「コストの高い年長者には辞めてもらいたい」が本音なのです。
そこに「コロナによる事業再編」だの「コロナの影響が長引きそう」だのという言い訳を得て、希望退職のターゲット年齢を下げ、募集人数も拡大させています。
思い起こせば昨年、ファミリーマートが40歳以上の社員を対象に800人の退職者を募集したところ、予想を上回る1111人の応募が殺到し、「そのうち86人は業務継続に影響がある」として、制度を利用した退職を認めず、引き留めたと報じられました。
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