「冷やし」を切り口にすることにより、従来では積極的に打ち出すことのなかったコンテンツに光が当たるようになった。
例えば、奥三河と呼ばれるエリアにある、新城市の乳岩峡(ちいわきょう)だ。全国的には無名の存在であるものの、乳岩峡は国の名勝天然記念物であり、沢の清流と山の上からの絶景はインスタグラムとの相性がよく、近年地元の愛知県民を中心に人気に火がつき始めていた。
「地元で火がつき始めているコンテンツには注目しています。乳岩峡はまさにそれでした」とJR東海営業本部の尾原崇文氏は話す。
ただ、コンテンツとして打ち出すには壁があったという。
「乳岩峡につながる一本道は狭く、人気上昇とともに路上駐車も増えたことから、今年5月に一般車両通行止めとなりました」
そこでJR東海は、東京はじめ都市部で人気を博しているシェアサイクルに注目。ドコモ・バイクシェアと連携して、乳岩峡の最寄り駅である飯田線の三河川合駅にシェアサイクルのポートを設置した。三河川合駅から乳岩峡へは徒歩約30分。自転車だと10分ほどで着く。乳岩峡へのアクセスを向上させた。筆者も実際に使用してみたが、自然の中を自転車で走るのは爽快な経験だった。
ポスターの主役となったタコも「地元の人は知っているものの、首都圏や近畿圏など他の地方では知られていないコンテンツ」だ。三河湾や伊勢湾は、矢作川や豊川、木曽三川など、県内を流れる大きな河川が森の栄養分を運んでくるため、優れた海産物が獲れる。 JR東海はこの点にも注目して、「タコの島」と呼ばれる日間賀島の島内にある旅館のほか、ホテルアソシア豊橋などの県内ホテルでタコ料理を提供するプランを造成した。
また、愛知県産の名産品、特産品を使ったかき氷「あいちスノーブーケ」を楽しめるプランもあるのも特徴の一つだ。「あいちスノーブーケ」は県内で採れるフルーツなどを活用しており、いざ一覧を目の当たりにすると、その種類の多さに驚かされる。
あいちスノーブーケに使われている名産品、特産品は、
自動車産業をはじめ工業のイメージが強い愛知県だが、実は農業県でもある。農林水産省が算出する都道府県農業産出額ランキングでは7位で、多くの種類の果物が採れることでも知られる。フルーツ狩りできる施設も県内各所にある。こうした“知る人ぞ知る”ポイントを活用しているのも「冷やし旅」の特徴だ。
愛知県には常滑焼、瀬戸焼といった全国的に知られた焼き物もある。フルーツのみならず、こうした名産品も冷やし旅のコンテンツの一つとしている。
例えば、常滑の人気カフェ・侘助では、コーヒーフロートをおしゃれな常滑焼の器に入れて提供する。器はそのまま持ち帰ることができるので、しゃれた常滑焼の器を片手に常滑の観光の目玉である「やきもの散歩道」を散策することができる。
サウナ、タコ、スノーブーケ、焼き物をはじめとしたコンテンツに一工夫加えて「あいち冷やし旅選べる体験」としてまとめ、「対象旅行商品購入者が好きなコンテンツを選択できるように設計したことで旅行者の満足度向上を狙った」(尾原氏)。
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