そんな中、容赦なく襲いかかったのが新型コロナウイルスだ。一般的なホテルステイは個室が基本。一方、カプセルホテルには個室はなく、就寝スペースにはカプセルユニットが並ぶ。施設の大部分がパブリックスペースを占める業態でもある。ゲスト同士が同じ空間にいる時間がほとんどというイメージからも、宿泊事業の中で忌避される最たる業態となった。
一方で、衛生面や感染症対策などについて取材を進めていくと、特徴的な取り組みが見られた。それは、清掃をはじめとした感染症対策、衛生面への徹底した対応が顧客獲得そのもの(業績)へリアルに直結する業態というそもそもの発想にある。コロナ禍の有無にかかわらず、除菌、消毒といった感染症対策は、安心お宿スタート時から意識して取り組んできたテーマであったことから、新型コロナウイルスへの取り組みもスムーズであった。
日常的な定番アイテムとなったマスク、安心お宿ではコロナ禍以前からインフルエンザなどの感染症対策も鑑み、ゲストへの無料配布を行っており、スタッフも従前から着用していた。また、館内の至る所に過剰とも思えるほど消毒用アルコールやうがい薬が置かれていた。コロナ禍以前から実施されていたオリジナルサービスの提供ノウハウは、新型コロナウイルスの初期対応についても大いに生かされた。
20年4月に発出された1回目の緊急事態宣言下には、多くの宿泊施設がクローズしたが、カプセルホテルからも当然のように明かりは消えた。宿泊施設全体の動きをみると、20年5月末を一つの区切りとして、6月1日から営業を再開するホテルや旅館が目立つ。
その中で、カプセルホテルは依然営業休止が続いていて、安心お宿も例外ではなく営業再開への準備は進まなかった。こうした状況下における営業再開へ向けての現場を取材する機会を得たが、印象的だったのは地道に“見える化”を進めていたことだった。
パブリックスペース、接客時、宿泊、ラウンジ、清掃などの注意点を計35項目掲示し、スタッフ全員の体温・体調・手袋マスク着用のチェック一覧表のほか、準備品や手順などを全員が共有できるようにしていた。そんな現場の対策は、感染症対策へのスタッフの意識、スキルを格段にアップさせその後の運営に大いに生かされていく。
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