マネーフォワードは8月27日、SaaSの一元管理サービスに参入すると発表した。新会社「マネーフォワード i」にて、年内に正式版の提供を目指す。サービス名は「マネーフォワードIT管理クラウド」。100以上のSaaSと連携し、社内での利用状況を可視化する。
新会社「マネーフォワード i」社長の今井義人氏(左)と、マネーフォワードの辻庸介社長
企業にとって業務にSaaSを使うことは当たり前の時代になった。SaaSへのシングルサインオン機能(IDaaS)を提供する米オクタ社によると、企業1社あたりの平均SaaS利用数は2020年には155種に急増している。マネーフォワード社内でも200以上のSaaSが使われるなど、管理の複雑性が増している。
マネーフォワードで実際に使われているSaaS
大量のSaaSを利用する上では複数の課題がある。まず、退職者や外部パートナーに発行したアカウントの管理がされていない点だ。退職者にアカウントが発行されたままになっていたり、組織変更や異動で必要なSaaSが変更になったりすることで、サービスを使っていないのにアカウントだけが残っていることが起こる。これはそのまま無駄なコストの増加につながる。また「シャドーIT」と呼ばれる、社員が勝手に使っているSaaSの把握ができないことも課題だ。
マネーフォワードIT管理クラウドでは、あるSaaSのアカウントを誰が持っているのか、またあるユーザーがどのSaaSのアカウントを保有しているのかの2軸で、利用状況を可視化する。ユーザーに「退職者」などのフラグを立てておくことで、サービスの利用状況が分かる仕組みだ。
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