「振り回されたのはGoToに似ている」との声も 東京五輪はホテルに恩恵をもたらしたのか瀧澤信秋「ホテルの深層」(4/6 ページ)

» 2021年09月01日 07時00分 公開
[瀧澤信秋ITmedia]

五輪で“助かったホテル”と“恩恵がなかったホテル”の違い

 一方「失敗した!」 と悔しがるのは、とある独立系ビジネスホテルの営業担当者。同氏は「関係者宿泊のホテル営業と情報交換したが、みなさんウハウハだった」という。「リアルエージェントが元締めで割り振られた」「リアルエージェントとの相応なチャネルが必要であった」と話す。日ごろから大手旅行エージェントとの付き合いが大切だったということだろうか。

 いずれにしても無観客ゆえに、本来あったであろう一般の需要が皆無だったことは間違いなく、五輪で“助かったホテル”“恩恵がなかったホテル”は関係者の受け入れ有無で明暗が分かれたようだ。

 恩恵があったホテルでは、どのくらい稼働率や単価の押し上げ効果があったのか。ホテル業界の市場データを提供する英・STRによると、夏季五輪が再スケジュールされた7月の東京のホテル稼働率は47.2%となり、20年2月以来の月間レベルになったという。

 さらに細かく見ると、開会式の前夜(7月22日)が60.5%、23日当日の夜が60.6%に達したといい、稼働率60%超えはGoToトラベルキャンペーン中であった20年11月21日以来とのこと。一方、会期中には稼働率は低下、閉会式の夜(8月8日)には45.4%、翌日の夜(8月9日)には29.2%に減少したというデータを発表した。

 調査対象ホテルの立地やカテゴリー(分母)などにより異なる結果も出るだろうが、筆者が確認したいくつかの受け入れホテルでは10〜15%の稼働率上昇という結果であった。

 他方、客室単価の押し上げはどうだったであろうか。取材した複数のホテル(宿泊特化タイプが中心)の傾向を大まかに見てみると、(契約時の金額は明示されなかったが)いずれにしても6月と比較して2000〜3000円ほどの上昇が見られた。

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