そういった事態を想定し、事前に対応策の検討を
「問6では、電子取引における“措置”について、『(4)訂正削除の記録が残るシステムまたは訂正削除ができないシステムを利用する』が最も手軽だと説明しましたが、ここで注意したいのはクラウドシステムを使う場合です。そもそも、国税関係書類の保存期間である7年または10年も保存できるのか、さらにサービス提供自体がなくなることも100%ないとは言えません」
多くの企業では、業務ごとに複数のクラウドシステムを併用していることも少なくない。個別に確認をし、必要に応じて事前に対応策を検討しておく必要があるだろう。
しなくてもいい。でも、したほうがいい
これは電子取引だけではなくスキャナ保存でも同様だが、バックアップについては電帳法の要件には含まれていない。しかし、問11でも触れたように不測の事態に備えたリスクヘッジは各企業側で行う必要がある。
「紙」と違って、データの場合は一度に大量の情報が消えてしまうことも十分、考えられる。国税関係書類が丸ごと消滅しては一大事だし、電子取引に関しては22年1月1日以降は義務化されるので、保存できていなければ罰則対象となる。以上のことから、バックアップは「しないでもいいが、したほうがいい」といえる。
判定期間の売上高が1000万円以下ならシステム導入を回避する方法がある
問3では、「電子取引では、電子データを保存するだけではダメ。検索機能の確保など要件を満たさないといけない」と説明した。検索機能については「スキャナ保存編」問15で解説しているが、これは、例外はあるものの基本的にはシステムありきの要件となる。スキャナ保存と違って、電子取引は全企業、事業者が対応しなければならない「義務」になるので、フリーランスの場合はシステム導入を負担に感じることもあるだろう。
しかし、「判定期間における売上高が1000万円以下である場合、税務調査時に電子データのダウンロード要求に応じれば、検索要件は全て不要になります」と持木氏は話す。判定期間とは、以下の通りだ。
<個人事業主>
電子取引が行われた日の属する年の、前々年の1月1日から12月31日までの期間
<法人>
電子取引が行われた日の属する事業年度の、前々事業年度
「この条件を満たしたフリーランスの方は、授受した請求書や注文書データをファイルサーバに規則正しく保存して、税務署に要求されたときデータを渡すことができる状態であれば、特別システムを導入する必要はありません」(持木氏)
問4で言及した“措置”についても、おすすめは「(4)訂正削除の記録が残るシステムまたは訂正削除ができないシステムを利⽤する」だと説明したが、ほかの選択肢を選べばシステム導入は回避できる。ここは事務処理にかかる業務負担、フローを考え検討する必要があるだろう。
保存方法、検索方法を工夫すれば、特別なシステムを導入せずに済む
電子取引(電帳法)に対応したシステムを持っておらず、突如「義務化」となった電子取引にどう対応していいか分からない――といった場合であっても、「一定ルールを順守することで、要件を満たしたことになります」(持木氏)。具体的には何をすればいいのか? まず「保存方法」のポイントは以下3つだという。
(1)取引情報データのファイル名に、規則性をつける
例えば「22年1月30日付けで、210万円(税込)の請求書が、アイティメディア株式会社から郵送で届いた」とする。この場合、ファイル名は「20220130_アイティメディア株_2100000」とする。
(2)「取引先」や「各月」など名前を決めたフォルダに格納する
アイティメディア株式会社と取引があるなら、「アイティメディア株」といったフォルダを作成。または22年1月受領データなら「202201」といったフォルダを作成し、(1)のファイルを格納するというようなイメージになる。
(3)ファイルやフォルダ名の記載、格納における規程(マニュアル)を作成し備え付ける
(1)(2)の説明――つまりどのようなルールでファイル名やフォルダ名をつけて、格納・保存をしているのかといったマニュアルを自社で作成しておく。その上で、税務調査の際、税務職員からダウンロードを求められたらデータを提出する準備をしておけばいい。
次に「検索方法」。これはシンプルに、エクセルなどの表計算ソフトを使って一覧表を作成しておく。具体的には、「取引情報データにかかわる取引年月日、取引金額、取引先の情報をエクセルに入力して一覧表を作成します。エクセルは検索範囲の指定、および2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索(アンド検索)ができるため、検索要件を満たすことができます」(持木氏)。
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