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「菅首相辞任」から考える、「トップに向かない番頭」はどんな人かスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2021年09月07日 09時52分 公開
[窪田順生ITmedia]

自分を支えてくれる「右腕」がいない

 それほどたくさんいるので当然、番頭という立場で終わることなく、組織の頂点に立つ人も少なくない。多くの有名企業で「ナンバー2」や「社長の片腕」「番頭」と呼ばれていた人が順当にトップへ引き上げられている。ソフトバンクの孫正義氏の番頭と呼ばれていた宮内謙会長などがその代表だ。最近ファミリーマートの社長になった細見研介氏も、伊藤忠・岡藤正広会長の懐刀と呼ばれる人物だ。

「右腕」「社長の側近」がいるのはほぼ半数(出典:BizHint)

 プロ経営者を外部から引っ張ってくるよりも、いまだに内部から繰り上がる社長が多いような日本では、「番頭出身トップ」はたくさんいるのだ。

 ただ、一方で、菅氏のように首相になった途端、これまでの功績がチャラになってしまうほどボコボコに叩かれる「トップに向かない番頭」もいる。

 この違いは何か。

 まず大きいのは、「番頭がいるか、いないか」ということがある。番頭がトップになったとき、かつての自分のようにトップを献身的に支えてくれる番頭がいないと、権力の継承がうまくいかないケースが多い。

 前出の『中小企業白書』で、中規模企業が親族以外に事業承継した際に、問題になったことを調べたところ最も多かったのは「社内に右腕になる人材が不在」(24.6%)で、次が「引き継ぎまでの準備期間が不足」(17.7%)だった。

 先ほども申し上げたように、中規模企業では7割以上に「社長の右腕」が存在している。そのような人たちが後継者としていざトップの座について周囲を見渡すと、自分自身には「右腕」がいない。しかも、引き継ぎまでの準備期間が不足している場合は、前任者のリーダーシップや人間関係も継承できず結果、社員や取引先からの信頼も得ることができずに「裸の王様」になってしまう。

 これはまさしく今回の菅首相の姿ではないか。

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