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「菅首相辞任」から考える、「トップに向かない番頭」はどんな人かスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2021年09月07日 09時52分 公開
[窪田順生ITmedia]

トップを守るために

 菅首相が叩かれ始めたとき、安倍首相が「菅総理には菅官房長官がいない」と言ったと報道されたが、まさしくあれは的を射た発言だったのだ。

 そしてもう一つ、「トップに向かない番頭」には、「ネガティブなイメージを引きずっている」という特徴もある。海外の経営者のサポート役と異なり、日本の番頭システムの最大の特徴は、トップを守るために、嫌われる役や汚れ役を買って出る部分がある。

 なぜこうなるのかというと「ルーツ」が影響している。日本企業の番頭は、その言葉の通り、江戸時代の商家の番頭制度がベースとなっている。

 大店(おおだな)の番頭は、「家」を存続させるため、とにかくその血を引く主人に忠誠を誓う。商売人としてサポートはもちろん、奉公人のマネジメントを代わりに行い、さらには、主人が安心して隠居できるように、後継者の教育まで担当をする。「家」を守るためならば、ときには非合法の仕事にも手を染めるし、隠し子など主人のスキャンダルもカネで揉(も)み消した。

6割以上が「右腕・側近」は必要と回答(出典:BizHint)

 そんな「商家の番頭」に、近代化で「現場の親方」という性格も加わった。これによって、トップへの忠誠心に加えて、トップの代わりに、会社や工場の現場を取り仕切って、従業員を動かしていく「現代版番頭」というシステムが確立された、と言われている。

 このような出自なので、どうしても番頭の中には「汚れ役」「嫌われ役」に特化した人々がいる。トップの後継者候補でもなく、トップの経営判断を支える参謀でもない。トップを守るために、嫌われるような改革を断行したり、悪い話をモミ消す役割だ。

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