Visaが普及に力を入れるタッチ決済。この2年間で対応カード枚数は5倍の5100万枚に、コンビニでの決済取引件数は36倍に増加した。しかし、決済全体としてみれば、比率が8割を超える欧州やオーストラリア、ニュージーランドなどと比べて、まだ比率は低く、Visaは国内での具体的な比率を明らかにしていない。
そんな中、「Visaのタッチ決済の人口当たりの件数が日本で最も多い」というのが、北陸地方に位置する石川県珠洲市(すずし)だ。
珠洲市は人口は1万5000人を切っており、半分以上が65歳以上という、少子高齢化に悩む地方の典型的な町だといえる。その中で、キャッシュレス決済の普及に力を注いだのが、北陸三県を地盤とする地方銀行の北國銀行だ。
「Visaデビットかつタッチ決済が大きな要因で、日本一になった」と北國銀行の杖村修司頭取は話す。
北國銀行では、5年前にVisaからプリンシパルの資格を得、カード発行業務(イシュア)だけでなく加盟店業務(アクワイアラ)の両方を直接行ってきた。普及に際しては、これが大きかったという。
「ストーリーが非常に大切だ」と杖村氏は説く。ライフスタイルの中で、自然とキャッシュレスが浸透するように、仕組みを整えてきた。2年前から、通帳レス、印鑑レス、スマホメインというデジタルバンクサービス「北國ライフタス」を展開。口座を開くと自動的にVisaデビットカードが提供される。
また地域の店舗の多くは北國銀行の取引先だ。加盟店には、1台5万円ほどの決済端末を無料で配布し開拓に努めた。「重要なのは地域銀行が投資していくこと。先行投資あってこそのDXだ」(杖村氏)
実際、この投資は報われ始めている。イシュアとアクワイアラを兼ねる北國銀行では、Visaデビットの普及とともに手数料収益も増加している。デビットカード発行枚数23万9000枚、加盟店数6592店舗となった21年3月期には、カード業務利益は9億4100万円まで増加した。10年後には40億円を目指すという。
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