Visaが推進する「タッチ決済」が普及のペースを上げている。対応するカードの国内発行枚数は9月末時点で3230万枚を突破した。前年同月から2.3倍となる枚数だ。店舗側の対応端末数も前年同月から3.2倍に増加。特にコンビニエンスストアではセブン-イレブン、ローソンなどが対応し、70%の店舗で利用が可能になった。
結果、決済取引数も急拡大している。9月の決済数は前年同月比で15倍以上となっており、特にスーパーマーケットでは前年同月比で約30倍に急増した。
課題は認知だ。10月にはすき家各店での利用で50%を還元するキャンペーンを実施するなど普及に努めているが、一般に普及しているとはまだいえない。Visaの調査によると、20代男性では認知度は57%まで上昇したというが、逆にいえばそのほかの年代では浸透はこれからだ。
ビザ・ワールドワイド・ジャパンの寺尾林人コンシューマーソリューションズ部長は、「まだまだ認知向上が必要だ」と現状について話した。
認知の問題は、店舗側のオペレーションにも現れている。当初はタッチ決済を行う際に、決済端末の「NFCボタン」を押す必要があった。利用者が「タッチでお願いします」と言わなければ店員はボタンを押せないため、オペレーション上問題になることがあったという。
現在はボタンはカード決済用の1つとなり、利用者側でカードを差し込むかタッチするかを選択できるように改められた。「Visaで」「カードで」と言われれば、店員はそのボタンを押すだけでいい。
次の大きなマイルストーンは東京オリンピックだ。Visaはオリンピックの公式パートナーであり、訪日客が増加するこのイベントをタッチ決済普及の契機と見ている。「コロナの現状を踏まえると、インバウンドがどの程度オリンピックに関連してくるか不透明ではあるものの、中期的に見ても来日される方が自国で使っている決済手段をそのままスムーズに日本で使えることは、国内、特に地方の経済活性化につながる大切なテーマだ」(寺尾氏)
また、タッチ決済は各カードブランドで技術的には共通の仕様であるものの、普及推進には温度差も見られる。Visaは、ブランド搭載カードのほぼすべてをタッチ決済対応するよう動いているが、Mastercard、JCBなど他ブランドではそこまでではない。
寺尾氏は、「Visaとしては、多くの関連事業者に参画してほしいと考えている。大手加盟店がタッチ決済を導入する際には、Visaブランドだけでなく他ブランドのタッチ決済も含めて導入するケースもあり、業界全体としてタッチ決済を進めていく機運が広がっていると思う」と話した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング