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» 2021年09月28日 05時00分 公開

45歳定年の波紋 「人材流動化」を生むのか、単なる「人材切り捨て」か働き方の「今」を知る(3/5 ページ)

[新田龍,ITmedia]

 年功序列の賃金制度に加えて、労働法制と判例によって強い解雇規制がある中、さらに定年延長となれば、企業側にとっては重い足かせとなるだろう。45歳定年制は企業側にとって、このような社会情勢への対抗策ともいえるものなのだ。

 仕事を与えられず、飼い殺し状態になった中高年社員をやゆして「窓際族」と呼ばれた時期があったが、それはまだ景気がよく、企業の財政的にも余裕があったころの話だ。今や企業にそんな余剰人員を抱えている余裕はなく、実質的なリストラは「早期退職優遇」という形で、まさに45歳以上の中高年社員をターゲットにしばしば実施されている。

 しかし、その早期退職でさえも「優遇」と名がつく通り、企業側では割増退職金を積んだり、再就職支援会社と提携して再就職先をあっせんしたりするなどの金銭的負担が必要となる。今般あらためて話題に上がった45歳定年制は、そういった中高年社員への人件費増に対して、企業側がほぼ金銭的負担なく、就業規則の変更程度で実行できる対抗策として強力な切り札というわけなのである。

 当然ながら、それによって切られる側からは強い批判の声が上がるのは自明だ。少なくとも10年以上前から議論されていながら、若年定年制が社会に全く普及していない理由を考えてみるとよいだろう。

 先述した通り、45歳前後という年齢はキャリアの節目どころか、子どもの教育費や住宅・車に要する費用などがかさみ、継続雇用と安定的な収入が最も必要な年代である。その時期に収入が不安定になる可能性がある制度が一般化してしまうと、結婚や子どもをもつこと自体に気後れする人が増え、少子化がさらに加速するリスク要因となる。当然、年金や社会保険の払い手も減り、制度自体が破綻することになりかねない。

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