「あなたのブランド買い取ります」 Amazon出品者を買収して海外展開するセラシオが日本上陸(2/2 ページ)

» 2021年10月07日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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「身売り」ではなく「協業」強調

 米国では、成功した事業家が事業を売却して悠々自適な生活に入るハッピーリタイヤの文化がある。一方で、日本では事業売却は「身売り」などと呼ばれることがまだ多い。米国で急成長したセラシオだが、日本で成功するにはこの文化をどう乗り越えるのかが課題となる。

 セラシオ日本法人では、事業の買収ではなく、「協業をメインに、ブランドを共に育てていくことで利益をシェアする」(小澤氏)ことをうたう。自社製品の工場などを持っている場合も、セラシオが買収するのはAmazonのアカウントとブランド商標だけだ。ブランドを売却しても、セラシオから発注を受けて製品は作り続けられる。セラシオの手にブランドを委ねることで、グローバル展開ができるわけだ。

 現時点では、楽天市場はアカウントの譲渡を規約で禁止しているため、会社まるごとの売却である株式譲渡でなければ、Amazonアカウントをセラシオに売却しても、楽天のアカウントは手元に残る。セラシオにグローバル展開を任せる一方で、グロース施策によって高まったブランド価値を使い、楽天などの別商流を使ってビジネスも継続できる。

 買収時の契約にも協業的な意味合いが盛り込まれる。通常、買収金額はEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)の2〜5倍が一般的だ。セラシオでは、そこに事業成長後の利益増加分を折半するアーンアウト条項を盛り込む。セラシオが事業をうまく成長させられたら、追加の金額を得られるというわけだ。

2億5000万ドルの買収資金

 セラシオは今後数年で2億5000万ドル規模の買収を国内で行っていく計画だ。「10億円、20億円規模の買収案件も出てくるはず。目安としては2025年までに50〜100社前後のイメージ」だと小澤氏は言う。

 セラシオの強みは、マーケティングやサプライチェーンの最適化など、事業をグロースさせるための体制が整っており、各専門領域で強い人材を持っているところだ。米国だけでなく、欧州、中国、マレーシアにも支社を置いており、グローバルな市場に販路を持つ。

買収とブランドグロースに特化したチーム体制を敷くセラシオ

 また2〜9週間で買収の契約を締結し、1〜4週間で引き継ぎを行うというスピード感も、他にない特徴だ。ブランドを確立している製品を持っているところなら、食品と薬品を除いてほぼ対象としており、取り扱いジャンルは広いものの、このスピード感は「Amazonセラーに特化して、いろいろなプロダクトパターンに取り組んできた経験値から来ている」(小澤氏)という。

ブランドとAmazonアカウントの買収に特化する戦略で、買収交渉を短期間で実行できる体制を持つ

 国内での買収交渉もスタートしており、近く「世界に通用するブランドで、10億円いかないくらいの規模感のディールがまとまる」(小澤氏)見込みだ。

 日本では、米国などに比べて中小企業の割合が大きく、ITやマーケティングなどに投資できる体力がないことから、大企業に比べて生産性の低さが以前から指摘されてきた。セラシオのような企業が、中小企業のブランドを買収し、グローバルに拡大していければ、全体として見たときの生産性も高まる。

 買収に対する悪いイメージなど、日本独特の文化を乗り越えて拡大できるかが注目される。

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