働きやすい環境を整えたことは、離職率の低下にも効果があった。不動産業界の平均離職率が16〜17%であるのに対して、現在の同社の離職率はわずか3%にとどまっている。新卒採用にもプラスに働いている。「地元の就活イベントでは、来場者の半数が当社のブースに足を運んでくれました。地方の企業でDXを進めているところはまだ少ないので、差別化にもなっていると感じます」(内田氏)。
さらに、新たな仕組みとして「リフレッシュ休暇制度」も導入。これは、5営業日・7日以上連続で休暇を取得した場合に3万円を支給する制度だという。その意図について、内田氏は「その人にしかできない仕事が残っていると、7日間続けて休むことはできません。リフレッシュ休暇を取得してもらうことで、業務の属人化を自ずと解消できます」と話す。結果的に多くの社員が積極的に制度を利用し、改革を前向きに捉えることにも寄与している。
DXを進める上で重要なことは、「手をつけやすい場所から改革してみること」だと内田氏は話す。それが同社の場合は、今まで使っていたホワイトボードを破棄して、アナログなスケジュール管理を見直すことだった。非効率だった業務がIT活用で効率化され、社員が成功体験を感じることで、他のツールを導入する際にも前向きに捉えてもらいやすくなる――同社の“グッド・サイクル”を生み出し、レガシーからの脱却を図れたきっかけは、斬新な発想でも、大仰な取り組みでもない小さな一歩だったのだ。
「DXの本質は、本来やるべきコア業務に注力できる環境を構築することにあります。例えばわれわれの仕事であれば、やるべきは紙書類の作成に時間をかけることではなく、入居者の要望に応えられる物件を整えることや、そのために物件のオーナーとコミュニケーションを取りスムーズな入居をサポートすることです。
コア業務に注力することが社員のスキル向上につながり、成長実感を持って働けるようになりますし、お客さまにもより良いサービスを提供できるようになります。それを実行せずに非効率な業務を続けるのは非常にもったいないですよね。
DXは地方の中小企業経営者にとって決して『縁の薄いもの』ではなく、規模や業種を問わず実現可能なことです。自社の業務の在り方に課題を抱えているのであれば、ぜひ、できることから着手していただきたいと考えています」(内田氏)
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