魅力度ランキングに群馬県知事が激怒! 「ランキング商法」の背景に、何があるのかスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2021年10月19日 09時32分 公開
[窪田順生ITmedia]

「ランキング商法」が注目される理由

 では、なぜ日本のみならず、国際社会においてまで「ランキング商法」のトラブルが増えているのか。

 筆者は、政治や経済に限らずあらゆる分野でとにかくランキングをKPIとして重視する、「ランキング至上主義」の世界的な高まりだと思っている。前出の服部所長のコメントにもあるように、実態よりもとにかくここの順位を上げる、上げられるのなら多少汚いことをしてもいい、というような風潮が世界的にも強まっているからだと思っている。

 例えば、「ビジネス環境度ランキング」は多くの新興国・途上国政府が順位を上げることを目指していると紹介したが、実は日本政府も例外ではなく、このランキングに強く影響を受けているのだ。20年4月、西村康稔経済再生相はこう述べている。

 『現在、「世界で一番企業が活動しやすい国」の実現に向けて、2020年までに世界銀行の事業環境ランキングにおいて先進国3位以内を目指すというKPIを掲げています。日本の順位は、13年に先進国15位でありましたけれども、16年に26位まで下落し、19年に18位まで向上したものの、新たな目標とさらなる取り組みが必要であります。このため、新たなKPIとして、30年のG20の国の間で1位、G20内で1位という目標を掲げて、KPIを掲げて改革を断行することといたしました」(西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年4月20日)

 事業環境を改善して、海外の投資を呼び込む「国策」の基準が、中国が不正操作できてしまうランキングはいかがなものかという感じだが、「成果」が分かりづらい経済政策の指標は、どうしても国際機関のランキングになってしまう。実際、生産性向上や国際競争力も、国際機関のランキングをKPIとしている。

 「ランキング=KPI」というトレンドが強まると、国際機関の調査だけではとても足りない。そこで民間会社や信用会社が自社のビジネスとして実施しているランキングまで政策に大きな影響力を持ちつつある。17年に内閣府がまとめた「地域の経済2017」には、「地域の魅力度が上がれば宿泊施設の稼働率も上がることが示された」として、グラフとともにこう述べているからだ。

 『「地域ブランド調査2016」では、都道府県の魅力度を公表している。この魅力度は、各都道府県に対し魅力を感じるかどうかという主観的な判断を30,372人に聞いた結果を指数化したものである。景気動向をコントロールした上で都道府県別の魅力度の変化と宿泊施設の稼働率の変化の関係を描くと、プラスの相関がみられ、魅力度が1ポイント上昇すると、稼働率は平均約0.16(90%の信頼区間:0.005−0.325)%ポイント上昇すると見込まれる』(内閣府 地域の経済2017 第2章 第2節「地域ブランド」の経済分析)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.