“画期的”楽天ポイント利息、原資はポイントの改悪分?古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)

» 2021年10月22日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 その理由は大きく分けて2点ある。まずは、支払う利息を一種の「広告宣伝費」とみなし、初めから利ザヤを取ることを考えていないパターンだ。他のポイントにはない「元本保証で確実にポイントが増加する」という売り文句に顧客が感化されれば、ネット広告やテレビCMを打つよりも低いコストで多くの顧客を楽天経済圏に引き込むことができる。そこから経済圏内のさまざまなサービスを長期で使ってもらえれば利息負担は気にならないレベルになるはずだ。

 もう1つの理由が、冒頭でも紹介した「朝三暮四」的な考え方だ。これはつまり、先にポイント還元制度を改悪することで、浮いた分のポイントを利息の原資に充てているという考え方だ。この場合、結果として顧客が受け取る総額としてのポイントが同じ、ないしは少しばかり減っていたとしても、顧客はポジティブな反応を返す可能性が高い。

 実際にポイント利息の導入に先立って、ポイント制度の改悪が10月1日に発表されていた。これまで、楽天はポイント還元の基準となる利用金額を税込金額としていたが、2022年4月以降は「税抜き金額」を基準にポイント還元することにしたのである。

2022年4月から、税込ではなく税抜き価格の1%にポイントを付与する

 これまでは、税抜き1万円の商品を楽天カードで購入した場合、税込価格である1万1000円の1%、110ポイントが還元されていたが、この措置が発効すると、1万1000円の支払いに対し100ポイントしか付かなくなる。税抜きベースの還元により、事実上楽天ポイントの還元率は1割もカットされることとなるのだ。

 ほぼ全ての決済にかかる還元率が1割カットされたのであれば、ポイント利息で年利0.1081%を付けても、その負担とほぼ相殺できる。さらに、全員が全ポイントを預けるわけではないため、利息を払っても改悪で浮いた分でお釣りがくる可能性が高い。

 仮に楽天ポイント利息が想定以上に普及したり、平均の預入期間が数十年にものぼったりすれば、利息導入前よりも負担が重くなる懸念もある。しかし、その可能性は低いだろうし、仮にそうなったとしても制度の見直しで対応ができるため、楽天側は特段大きなリスクを取っているわけではなさそうだ。

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