「日本のアニメ」は家電や邦画と同じ道を歩んでしまうのかスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2021年11月02日 11時39分 公開
[窪田順生ITmedia]
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追い抜かす時代が来るかも

 「ジャパニメーション」という言葉を世界に広めた『機動戦士ガンダム』がハリウッドで映像化される。これまでの『ドラゴンボール』などの実写化失敗から「やめてくれ」という声も多いが、日本が誇るアニメ『ガンダム』の再評価につながると好意的に受け取る方も少なくない。

 が、実はこの作品を手がけているのは、先ほど触れたレジェンダリー・エンターテインメント、中国資本の入った映画会社だ。

 本来、日本のキラーコンテンツなのだから、日本人の手で実写化して、日本人の手で世界で売っていくべきだ。ナショナリズムの観点ではなく、そのように自国で産業化しないと、「次」が続かないのだ。

 帝国データバンクによれば、日本のアニメ制作会社300社の6割は従業員20人以下で、3割が売上高が「1億円未満」だ。中小零細企業だらけで、低賃金労働者が命を削って高いクオリティーを支えている。

日本のアニメ制作会社の約6割は従業員20人以下(出典:帝国データバンク)

 本来、世界に売るコンテンツの要なのだから、国策としてこれらの小さな会社を統合・再編して、巨大なアニメ制作企業をつくらないといけない。企業規模が大きくなれば投資も呼び込めるし、賃金も上がる。輸出も促進される。韓国ドラマを世界に売るスタジオドラゴンがまさしくそれだ。

 「日本のアニメは世界に人気」と言いながら、実際に潤っているのは版権ビジネスをしている人たちだけだ。「作り手」にはなかなかその恩恵がない。だからこそ、コンテンツを海外企業に売ってもうけるスタイルではなく、自国内でもしっかりと産業化をする仕組みが必要なのだ。

 白物家電、半導体、造船、鉄鋼、そして邦画……「日本ブランドは揺るがない」「日本の技術は世界一」と叫びながら、次々と追い抜かされた産業と同じにおいが「アニメ」からも漂うと思うのは、気のせいか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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