渋谷で「5000円乗り放題」を始めて、どんなことが分かってきたのか週末に「へえ」な話(3/3 ページ)

» 2021年11月13日 08時10分 公開
[土肥義則ITmedia]
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ビジネスのキモは「ちょうどいい塩梅」

 さて、今後のmobiはどのような形で、展開していくのだろうか。「利用できるエリアを増やしてほしい」といった声が多く、12月には池袋エリアでもスタートする予定だ。

 会員は個人のみだけでなく、法人向けも用意している。月2万2000円を支払えば、地域のスーパーや飲食店、学習塾などが登録できる制度である。法人会員になればアプリの地図上に店舗情報などを掲載することができ、店舗前に停留所を設置することもできる。また会員になれば、お客もmobiを利用できるようになるので、「客数アップ=売り上げ増」を狙えるかもしれないのだ。

 最後に素朴な疑問を一つ。mobiは“乗り合い”サービスなので、目的地に向かって走っていても、途中で他の客が乗車することがある。目的地が同じあればそれほどの遅れは生じないが、違うこともある(いや、そのほうが多いだろう)。そうなれば、到着時間がどんどん遅くなってしまうのではないだろうか。1人だけならまだいいが、また乗ってきて、誰かが降りて、また乗ってきて、誰かが降りて……といったことは起きないのだろうか。

 「AIによって制御していまして、到着時間が大幅に遅れそうな場合、新しいお客さまを乗せずに、先に乗車されている方を優先的に到着させるような仕組みになっています」(成島さん)。というわけで、渋谷エリア内をぐるぐる回って、“永遠に目的地に着くことができない”といったことはなさそうである。

 「しょうもないことを考えるなあ。AIに頼らなくても、困ったお客さんがいたら、運転手がなんとかしてくれるでしょ」と思われたかもしれないが、この問題はとても重要なのである。運営側は効率的に運行しなければいけないし、利用者の満足度も高めていかなければいけない。利益のことを考えると、あいのりは多ければ多いほどよいが、利用者からすると不満が出てくる可能性がある。

 停留所をどこに設置すればいいのか、数はどのくらいがいいのか。あいのりをどこまで認めればいいのか、到着時間の遅れはどこまで許されるのか。ちょうどいい塩梅を見つけることが、このビジネスのキモとなりそうだ。

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