欧州リヒテンシュタイン公爵家がオーナーを務める国際的プライベートバンキングのLGTは、東京に新拠点を開設し、国内の富裕層向けにサービスを開始した。11月18日に行われたLGTプライベートバンキング事業開始記者会見では、外資が改めて日本の富裕層に注目してきたことがうかがえた。
日本は世界でも有数の富裕層を抱える国だ。金融資産資産5億円以上の超富裕層の数では、米国と中国が圧倒的だが、日本は第3位につける。潜在的な顧客は多いものの、これまで日本市場に参入した外資のほとんどは失敗し、撤退を余儀なくされてきた。
「過去には外資のチャレンジがあり、かなりの数が撤退した。1つ目の障壁が、日本の金融機関における取り引きの歴史と信頼がある中で、外資が入ってくるのが難しかったこと。顧客も外資の名前を受け入れる要望がなかった。2つ目が、強い規制環境があったことだ。海外と同じサービスを提供するのが難しく、差別化が難しかった」
その理由を、LGTのプライベートバンキングジャパン 永倉義孝CEOはこのように話す。しかし、グローバリゼーションの進展で日本の独自性が弱まり、さまざまな投資対象へ、包括的なアドバイスを長期的に提供するニーズが高まってきている。これに応える形で、LGTはサービスを提供する考えだ。
一つは、株式や債券などの伝統的投資対象以外への投資機会の提供だ。長期的に続く低金利環境下で、伝統的資産の期待リターンは厳しくなってきており、代わりに注目されているのが、プライベートエクイティやプライベートクレジットと呼ばれる、非公開の投資対象だ。例えば未公開株などが含まれる。
「プライベートエクイティ(PE)、プライベートクレジット、プライベートリアルエステートはかなりの配分で顧客のポートフォリオに入ってくるだろう。かなり積極的に組み入れていくことになる。リヒテンシュタイン公爵家が保有しているポートフォリオに、顧客も乗ることができる。このポートフォリオを通じて、PEへの投資となるのが大きい」(永倉氏)
LGTはもともと、リヒテンシュタイン公爵家の資産を運用するファミリーオフィスとして生まれた。一家族が経営するものとしては、世界最大のプライベートバンクだ。オーナーが安定しており、一族の資産を30世代に渡って管理してきたこともあり、事業哲学を変えずに長期目線で運営するところに強みがある。
会見では、ESG投資やインパクト投資へ長くかかわってきており、そうした責任とともにある投資への取り組みがLGTの差別化要因だとした。なお、欧米のファミリーオフィスや機関投資家が一つのアセットクラスとして意識し始めた仮想通貨については、現在は取り扱わないが、「オーナーは世の中の変化に柔軟に対応してきた。仮想通貨全般についても真剣に見ている」(永倉氏)とした。
LGTのプライベートバンキングサービスは、一律の資産額制限は設けないが、基本的に10億円以上の顧客を対象とするとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング