「これまで感覚値でしかなかった、来店回数などのデータで可視化できるようになりました。販売店などの現場では、これまで肌感覚で接客していたのですが『お客さまのデータがないと的確なコミュニケーションがとれない』という意識が強まっています。アプリ活用法など、現場ならではのアイデアが寄せられるようになり、それを基にアップデートするなど、デジタル活用の好循環が生まれています」(間瀬氏)
定性的なものだけでなく、定量的な成果も目に見える形で現れている。
従来オフライン店舗で行っていた、会員限定のシークレットセールを21年7月にオンライン化。これまで蓄積したデータや会員基盤などを活用することで、メルマガ登録ユーザーが前回比で10%増加、参加者は同じく前回比34%も向上したという。
シークレットセールでは、「デジタルならでは」の売れ方もしている。これまで、オフラインのセールでは、対象となる売り場のアイテムのみ売れるケースが多かったが、顧客データに基づいた的確なレコメンドを実施することで、セール対象外のアイテムも売れるようになったのだ。シークレットセール対象外のアイテム売り上げは前回比で200%増というから驚きだ。もちろん、シークレットセール対象アイテムの売り上げも、前回と比べて増加している。
今後も、アスリートがパフォーマンスを出せるブランドとしての認知を広めていきたいという間瀬氏。「アスリートにとって『アンダーアーマーを着たらやる気が出る』『モチベーションが“アガる”』というブランドであり続けたいと思っています。それを実現するためにどのようなコミュニケーションをとるべきか、どのような接点を持てばよいのか。そういった視点を持って、店舗展開やメッセージの届け方を見直していきたいです」と展望を話す。
さらに個人的な所感として、「コロナ禍になってからデジタル施策は確かに増えたものの、より一層、リアル店舗で購入することの価値も高まったのでは」と推察する。
「自分の目の前にいる店員と話をして、その人がすすめてくれた商品はオンラインで買ったものより大事にしますよね。そういったオフラインの経験やイベントも大事にしたいですし、それぞれのお客さまにとって心地よく記憶に残る接客をデジタルでも実現したいですね。
これからも『自分に向けられた言葉』だと思ってもらったり、個々に刺さるメッセージ配信であったり、アスリートのモチベーションが高まるコンテンツを発信しながら、一人ひとりに寄り添っていく、そんなブランドでありたいと思います」(間瀬氏)
今後の課題は、1日遅れで統合している各チャンネルのデータを、リアルタイムで統合することだという。コロナ禍が落ち着くにつれ、「リアルの価値」も再評価されそうな中、ドーム社のようなオンラインとオフラインの融合を目指す企業は、今後も増えていきそうだ。
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