羽田空港のターミナルの管理を担う日本空港ビルデング。物販や飲食業を展開している同社にとって、売店の土産物やスイーツなどの売り上げは大きな収益源だった。
しかし、そうした状況はコロナ禍で一変。航空旅客数とともに、商品売り上げも減少した。これに対応するべく、ECに注力。1年間で月別最大5倍ほどアクセス数を伸ばしたほか、1日の売り上げは最大で約100倍、累計会員数は約4倍になったという。
このときキーワードになったのは「デパ地下客」だった。なぜ、デパ地下客だったのか。そして、デパ地下客をピンポイントで狙うために、どのような広告を仕掛けたのか。同社EC事業課の堀史晴さん、高橋亮さんに話を聞いた。
羽田空港には、そもそも一定数のファンがいる。心躍る旅程の発着地として、思い入れを抱く人が多いのだろう。2020年7月にEC事業課が発足し、主にスイーツを扱うECサイト「HANEDA Shopping」の販売促進を行うにあたり、まずターゲットとして考えたのは、こうした“羽田空港のファン”の存在だった。
SNS広告でこうした層にリーチするために、ベンチャーのunerry社と提携し、ビーコンデータを活用した。ビーコンにはさまざまな種類があるが、この場合のビーコンは、Bluetoothの電波を発信する小さな端末のこと。駅や店舗内など、全国で約210万も及ぶさまざまな場所に設置されている。受信機能をもつアプリをインストールし、位置情報の提供に同意している人のスマートフォンが電波受信範囲内に入ると、電波をキャッチして位置を測定する仕組みだ。
このようなサービスを利用して、名前や電話番号などの個人を特定できる情報は取得せずに「羽田空港を過去に利用した人」を対象に広告を配信した。19年のお盆やお正月に羽田空港に来た人の多くは、コロナ禍で帰省できないだろうと考え、「会えない今だからこそ届けよう」というメッセージで広告を配信した。実際に、お中元やお歳暮の時期に売り上げが伸びる傾向にあるという。
広告配信のターゲット層は、もう一つあった。「デパ地下の利用者」だ。始めるまでは仮説にすぎなかったが、ヨックモックの「シガール」など、扱う商品が近しいため、好感触を得られるのではと見込んだ。実際に、こうした手法が売り上げに結びつき、満足な結果が得られたという。
しかし、「デパ地下の利用者」というのは、セグメンテーションが難しい層だ。デパ地下は文字通り“地下”にある。位置情報を把握する技術の代表格といえるGPSは、人工衛星を用いて位置情報を把握するため、「高さ」の把握に弱い。
この問題も、unerryの「Beacon Bank」で解決した。ビーコンネットワークとGPSを併用する同サービスで、より詳細に「地下にいた人」を把握できた。また、実際にデパ地下を利用している人だけでなく、サイトで扱う商品を好みそうな人を行動から分析し、広告配信の対象とした。
「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのか
“パートは低賃金で当然”の日本で、なぜ「全従業員を正社員化」できた? イケア・ジャパン人事に聞く
オンラインでも学生の心をがっちり掴む! 成功例に学ぶ、コロナ禍のインターンシップ必勝法
M&Aで「離職者が急増」「旧出身社間の雰囲気が悪化」は、人事が解決できるCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング