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» 2021年10月01日 07時00分 公開

パンデミックでも店舗を“休眠させない” ユニファイドコマースは、小売りの救世主になるか海外と日本の事例(1/4 ページ)

オンラインとオフラインの垣根を取り払い、全てのチャネルを「統合」する「ユニファイドコマース」は今後、どのような展開を見せるのだろうか。海外と日本の事例を取り上げ、将来を占ってみたい。

[小林啓倫,ITmedia]

 オンラインとオフラインの垣根を取り払い、全てのチャネルと関連プロセスを文字通り「統合」(ユニファイド)して、顧客に対してより良い購買体験を提供しようという「ユニファイドコマース」。単なる概念ではなく、最近ではいくつかの実例も見られるようになってきた。今後はどのような展開を見せるのだろうか。海外と日本の事例を取り上げ、将来を占ってみたい。

リアルではなく“Zoom接客”なのに、60%以上が購買に結び付く

 まずはオーストラリアのアパレル企業、Cue Clothingの例を見ていこう。

 同社は1968年に設立。オリジナルのファッションブランドを展開し、オーストラリアとニュージーランドの主要都市に店舗を構えている。アパレル業界ではファッションという商品の性質から、流行を見極めて素早く製品を展開し、同時に顧客に対して質の高い購買体験を提供することが要求される。そのため世界各国の衣料品業者が関連システムの導入・改善に力を入れているが、Cueも例外ではなく、2019年、20年と2年連続で、オーストラリア郵便公社が主催するORIAS(Online Retail Industry Awards)で「最優秀マルチチャネル小売業者賞」を受賞している。

photo CueのWebサイトより

 こうした評価の立役者となっているのが、彼らが実現したユニファイドコマースの仕組みだ。

 同社のユニファイドコマース実現に向けた取り組みは、実に10年前から始まっている。11年には早くもチャネル間での価格統一や、在庫の一括確認、ロイヤルティープログラムによる顧客行動の把握といった施策を実現。

 10年代の後半には、オンライン購入時の物理店舗における受け取りや後払い、顧客向けの在庫確認機能(もちろん全チャネル横断での検索が可能)、顧客が指定した場所への物理店舗からの配送、さらには物理店舗からの3時間以内の超短時間配送を実現するなど、立て続けに購買機能の高度化を進めてきた。

 こうした段階的な取り組みの結果、現在Cueの購買プラットフォーム上では、POSデータの処理、顧客情報の更新、在庫確認、支払処理といった一連のトランザクションが一元化され、リアルタイムで処理されるようになっている。

 しかもそれが、同社が保有する全てのチャネル(8つのオンラインストアと240以上の物理店舗)を横断する形で行われているのだ。これは当たり前のように感じられるかもしれないが、伝統的な小売業者としてスタートし、半世紀以上の歴史を持つ企業が、別々に構築されてきたチャネルやシステムを“統合”するために、いかに多大な投資を重ねてきたか想像に難くないだろう。

 確かにこれらは優れた取り組みかもしれないが、「あまり未来感はないな」という方にはこちらのサービスはどうだろうか。それはZoomを通じたスタイリストとのオンライン・セッションだ。

 このサービスは20年3月に導入されたもので、Cueの顧客は自宅にいながら、物理店舗にいるスタイリストにZoom上でファッションの相談ができる。

 単に顧客と店舗を映像でつなぐだけのサービスではない。

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