競合は無印とニトリか 「イオン・キャンドゥ」タッグで再編進む100円ショップ業界の今小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)

» 2021年11月25日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 04年、業界初のPOSシステムによる単品管理とデータ分析を開始。その結果を踏まえ、品ぞろえを大幅に絞り込んだ上で、圧縮陳列をやめて、センス重視の家庭用生活雑貨を色鮮やかに陳列する「COLOR THE DAY」という女性向けの店舗を投入し、女性消費者に支持されるようになった。

 00年代以降、地方および郊外における女性免許保有率の上昇と、軽自動車の普及によって、ロードサイドには女性向け小売業態(ドラッグストア、ユニクロ、しまむら、ニトリなど)が成長する環境が整う中、セリアも新たな女性ターゲットのスタイルを生み出すことに成功して時流に乗ったのだ。おしゃれ雑貨の廉価版といったセリアの店は、女性客の支持を得て急速に店舗数を増やし、ダイソーを追走し始めることになった。

新たな手法でダイソーを追走するセリア(出所:同社公式Webサイト)

 こうしたセリアの成長は、100円ショップ業界のトレンドを一気に転換させ、データベースマーケティングと女性目線の店舗作りが主流となっていく。00年代から10年辺りまで伸び悩んでいた首位ダイソーも方針を転換し、POSを導入したデータベースマーケティングに舵を切り、今のピンク色の看板と女性客に快適な店作りに移行したのだ。そこから再び成長基調に復したダイソーとセリアは競り合いを続け、現在の2強時代へと至っている。

 かくして、女性消費者向けのお手軽雑貨店となった100円ショップは、主婦層の生活必需品ワンストップショッピングニーズの一角を担うようになり、食品スーパー、ドラッグストアとの共同出店が急速に増えてきたわけだ。この戦いに出遅れたキャンドゥが、資本を渡してでもイオングループとの連携を選んだのにも合点がいく。

百円ショップ、今後の競合は無印?

 上位4社の売り上げを合計すると、8500億円を超える規模にまで成長した100円ショップ業界は、ありとあらゆるジャンルの商品を100円で提供するようになり、日常生活で必要なものはほとんどそろう、というような業態になっている。100円という価格設定で可能な商品開発が限界を迎えるなかで、近年の流れは300円、500円といった価格帯を広げ、商品を増やす方向に向かいつつあり、ダイソーでも100円以外の商品も数多く並べるようになっている。より幅広い価格帯においてコストパフォーマンスのある雑貨類の提供に向かっていく方向性なのであるが、そうなるとベンチマークとなるのは、無印良品(良品計画)といえる。

 既に「無印良品」ブランドを確立し、全国のショッピングモールに展開しながら海外でも順調に成長している良品計画は、今やスタンダードな雑貨チェーンとしてトップ企業であることは、ご存じの通りだろう。21年8月期の営業収益4536億円(前期比13%増)、経常利益453億円(経常利益率10%)の優良企業であり、国内の大型ショッピングモールに欠かせないテナントとなっている。

 製造小売業として無印良品という世界観の下、さまざまな商品を生み出している良品計画は、品質の良いシンプルな商品をリーズナブルに提供することで、消費者の高い支持を得ており、その存在感はゆるぎない。ただ、その価格設定がもう少し安ければいいのに、と考える消費者層もあるのではないか、というのが100円ショップ側の発想だ。1000円台の無印商品の廉価版が存在すれば、それで構わないという消費者もいるはずであり、300円、500円といった価格帯でそうしたニーズを取り込んでいこうというのが、100円ショップの複数価格帯商品の方向性であろう。

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