最近、渋谷や新宿に現れたダイソーの新業態「Standard Products」はまさにこうしたシンプル雑貨の廉価版ショップであり、ちまたでも、無印との比較で話題となっている。実際、売り切れ続出で棚が空いてしまうほど好調で、大反響を呼んでいるようだ。
無印良品の店舗網を考えると、大都市圏への出店が大半で、地方では有力商業施設に散在しているのみなことから、無印側は一定の人口規模のある商圏でないと成立しがたい業態であることを自ら認識しているとみられる。ということは、100円ショップなどによる廉価版雑貨店が、そうした無印不在の地方や郊外に今後展開することで、成長余地を見いだすことは十分に可能だろう。
アパレルグループ「パル」が展開する300円ショップ「3COINS」は100円ショップとは出自が異なる均一価格ショップだが、ここも順調な成長基調にあるようだ。20年度売り上げは260億円ながら、21年度上半期は前年比83%増となる増収ぶりだという。また、ニトリがインテリア雑貨ショップとして展開する「ニトリ デコホーム」も、廉価版雑貨店として支持を集めており、急速に店舗数を増やしている。
100円ショップのみならず、さまざまなジャンルからシンプル雑貨の廉価版マーケットへの参入は相次いでおり、かつ一定の成果を出しつつある。直近においては、コロナ禍による巣ごもり需要が追い風となっていることもあろうが、背景を考えれば、アフターコロナにおいても、こうした業態の成長はまだまだ続くと見ていいだろう。
一般的に小売業界はECの脅威にさらされており、ほとんどの業態でオンラインシフト対策に頭を痛めているのは周知の事実だ。100円ショップの商品は基本的には単価が安過ぎるため、送料の関係上、ECにシェアを奪われるという環境にはない。また、基本的に各社のオリジナル商品であるため、他のネットショップに代替されるという懸念がない。
本文では触れなかったが、コンビニとのコラボも広がり始めており、こうした販路も市場拡大につながる可能性がある。今や、100円ショップ業界は、ECの脅威にさらされることなく、廉価版シンプル雑貨市場やコンビニコラボというフロンティアを見いだし、再び成長ステージに入ったといってもいいだろう。こうした環境を考えれば、キャンドゥの資本提携のタイミングは、100円ショップの2強時代を阻んだ起死回生のアライアンス、として流通史に刻まれる可能性があるかもしれない。
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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