「ノスタルジックおじさん」とは一言で言うと、「自分が若手のころに刷り込まれた価値観やルールが絶対に正しいと盲信し、中高年になっても執着し続け、自分より下の世代に押しつける人」のことで、筆者の造語である。
なぜこんな言葉をつくったのかというと、報道対策アドバイザーとしてさまざまな組織の不正や不祥事の現場に立ち合ってみると、この類の人が多くいることに気付いたからだ。
例えば、ある会社で部下をいびり倒して病院送りにした上司がいた。「おまえ、使えなさすぎ」「オレなら恥ずかしくて給料もらえない」「生きている価値がない」などの暴言は日常的で、実際に蹴るなどもしていた。あまりにも常軌を逸した「指導」の数々に、会社側は何かこの上司と部下の間に個人的な怨恨でもあるのではないか、と社内調査を開始したが、仕事上のつながり以外一切ない。
そこで、この上司に直接、原因を問い質したがそこで奇妙なことが起きた。部下についてどう考えているのか、なぜこんなことをしてしまったのか、という質問をいくら繰り返してもまともな答えが返ってこない。はぐらかしているというより、何を聞いても“思い出話”になってしまうのだ。
自分が若手だった時代は、これくらい厳しい指導は当たり前で、同期の誰それはもっとひどい目にあった。当時は非常に辛かったが、今となって振り返ってみれば、そういう過酷な環境を乗り越えたことで大きく成長ができた、などなど。いかに自分たち世代が激しいハラスメントを受けてきたのかということを切々と訴えるのだ。
「いや、それはよく分かりましたけど、だからといって今の時代、部下に同じことをしてはいけないですよね。研修でも学んだはずなのに、なんでこんなことをしちゃったんですか」
そんな追及をしても、質問の主旨が分からないでポカンとして再び“思い出話”を繰り返す。そして、それがひとしきり終わるとお次は“持論”を振りかざす。最近はコンプライアンスだなんだと、若手がそういうプレッシャーにさらされていないので打たれ弱い。人として成長できないので本人にとっても会社にとっても良くない、などと世を憂(うれ)い始めるのだ。
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