これまでは他のアラブ・イスラム国家と同様の週末適用を行ってきたUAEが、週の公的な労働時間を半日削減してまで国際標準に近い制度を実行する背景には、UAE、とりわけドバイの国際競争力を高めるというこれまでの戦略に則ったものであるといえるだろう。
かつてUAEは真珠採取や農業といった典型的な第一次産業で生計を立てていたが、1950〜60年代に油田が発見されてからの発展は目まぐるしいものだった。IMFが10月に公表したUAEの1人当たりGDPは3万8661ドルとなっており、4万0089ドルの日本とほぼ同じ水準にまで達している。しかし、UAEの足元における石油や天然ガスの依存度はGDP対比で30〜40%ほどであり、他の産油国と比較して低めの水準であることに注目すべきだろう。
そもそも、UAEを構成する連邦国家のうち石油・天然ガスのほとんどは首都の存在するアブダビ首長国で採掘される。ドバイなどの他首長国における石油・天然ガスの量は相対的に微々たる量にとどまる。
UAEは国際的には1つの国として扱われているが、実態はやはり7つの国の連邦である。アブダビとそれ以外の首長国で資源産出量に格差が存在することから、天然資源に恵まれない首長国にとって産業の多様化は急務であった。
そんな産業の多様化にいち早く手をつけたのがドバイだ。ドバイは1985年に初めて経済特区を設置し、多国籍企業の誘致を進め移民も多く受け入れた。2010年には、高さ828メートルの世界一高い高層ビルとして今でもその記録を破られていない「ブルジュ・ハリファ」が完成。観光や流通・不動産でも国際的に知名度の高い都市へと変貌を遂げることに成功したのだ。
このような国際都市としての側面は為替政策にも現れている。UAEの法定通貨はUAEディルハムだが、これは98年以来、米ドルに連動する為替ペッグ制を採っており、1ドル当たり3.6725UAEディルハムへ固定されている。その結果、ドバイを筆頭にUAEの外国人比率は7〜8割にも達し、その多くがインドやフィリピンといったアジア人や、欧米人といったアラブ・イスラム圏外の居住者で占められているのである。
このように考えると、そもそも数度にわたって休日を変更してきたUAEにとって、このたびの休日の変更という施策は、これまでのUAEにおける経緯を考えるとむしろ自然であるといってもいい。
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