興味深いのは、このドラマには現在のサイバー空間で話題になっている「テーマ」が随所に散りばめられていることだ。データ世界、AI、知的財産の搾取、メタバース、コネクテッド世界、リモートワーク、陰謀論、フェイクニュース、サイバー捜査、ダーク(闇)ウェブ、内部告発……現在世界でサイバーやデータをめぐって話題になっていることが満載なのである。
IT関連のニュースを追っている人たちや、サイバーセキュリティ関係者なら「あるある」だらけで、そのリアリティに富んだ内容に、思わずニヤリとすることもあるだろう。
この『Project 2030』には「原作」がある。トレンドマイクロ社が21年5月に公開した同名の報告書「Project 2030」である。
全38ページのそのリポートは、これまで確認されたサイバー攻撃・犯罪の実例を分析し、「情報セキュリティやデータ保護、法執行、国際関係の各分野における100人以上の専門家」の意見を聞いてまとめられた。30年に世界の一部地域で起きうる問題を描き、人やビジネス、国家の観点から、先端テクノロジーに対してどうサイバーセキュリティを担保していくのかを問いかけている。
そこから派生したドラマ版では、インフラを支えるような先端技術で巨大化した企業のプロダクトのアクセス権が地下で売られている――そんな問題が取り上げられている。もちろん、日本企業などにも無関係とはいえないストーリーだ。この話は、どんな企業にも当てはまるし、これから直面していくリスクとなるといえる。そして医療などにもつながっていけば、人命も失われかねない。
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