劇中のディテールも注目してほしい。例えば、自分のホログラムは、本物の感情を隠しながら会話を行う仕様になっている。つまり、公の自分の姿は、あらかじめ「設定」しておくことが可能になるとの示唆である。
また、失業者だと思われる内部告発者とのやりとりで、告発者のホログラム映像が鮮明ではなく途切れ途切れになっており通信インフラに問題があることが想像できる。失業してやさぐれた生活を想像させる。
トレンドマイクロ社といえば、現在、世界100カ国以上の政府機関と取引し、中東や東南アジアでは政府のインフラも支えている。さらに日本では13年連続でセキュリティソフト販売本数のトップを記録、日本の官公庁への導入でシェアは約46%に上る。そんな国際的なセキュリティ企業だけに、世界情勢の要素も含まれていて、失礼ながらセキュリティベンダーが製作したものにしてはかなりクオリティが高いといえるだろう。
このドラマをここまで見て痛感したのが、私たちが進むデジタル化の波はもう止まらないこと。ドラマの主題になっているように、これからは間違いなく、データこそが世界を支えていくことになる。
ただ、そこには課題がある。ドラマのセリフに、「私たちのデジタルフットプリントは大量でAIが人格を再現することもできます」というほど、私たちのデータはオンライン上に想像もできないような規模で蓄積されている。
自分たちの個人データや趣味嗜好(しこう)、行動などがバラバラのデータとして蓄積され、それらを紐(ひも)づけていけば、おそらく自分以上に自分のことを「体現」した自分自身の分身がオンライン上に存在していることになる。
今後、その現象は、加速度的に拡大していく。ただそこにはセキュリティリスクが伴い、安全性が課題になる。劇中でも「もしそれほどのデータが信頼できない政府に渡ったらどうなるのでしょうか?」との問いかけるくだりがあるが、まさにその脅威をこれから日本や、私たち自身が考えていく必要がある。
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