緑茶の「朝ボトル」を販売して、なぜ売り上げが1.8倍になったのか週末に「へえ」な話(2/4 ページ)

» 2021年12月25日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

このビジネスのポイントは「返却」

 1本300円のボトルを販売して、どのような反響があったのだろうか。結論から先に言うと、全くダメ。店の前を歩くビジネスパーソンにチラシを配っても、反応はいまひとつ。「子どものころジュースの瓶を返却しましたよね。あれと同じ仕組みです」といった説明をしても、若い人からは「はあ? なにそれ?」といった感じ。それもそのはず。子どものころに、瓶を返す経験をしていないので、理解できなかったのだ。

通勤前に購入するビジネスパーソンが多い

 毎朝20本ほど用意したものの、1日1本も売れなかったことも。そんな日が1カ月以上も続いたので、「ダメだな。もうやめようか」という気持ちになってもおかしくなかったのに、松本さんはあきらめなかった。「お茶のファンを増やすというよりも、日常の飲み物として定着させたかった」という熱い思いもあって、粘りに粘った。そうすると、少しずつ売れ始めたのだ。

 店の前を歩くビジネスパーソンが買って、それをオフィスで飲む。珍しいボトルを目にした同僚から「それなに? どこで買ったの?」といった質問がでてきて、「じゃあ、ワタシも買う」「オレもオレも」といった流れで広がっていったのだ。こうした口コミによって、ボトルを手にする人が増えていき、1カ月半後には完売する日がでてきたのだ。

mirumeの店内

 ……と、ここまで読んで、「ちょっと待った!」と思った読者も多いかもしれない。完売しても「1本300円×20本=6000円」にしかならない。それなのに「売り上げがコロナ禍前の1.8倍になったって、どういうこと?」と感じられたかもしれないが、このビジネスのポイントは「返却」にあったのだ。

 ボトルの返却は、店舗外のカウンターに設置されている穴に挿すだけでいいが、その際に“ついで買い”がうまれたのだ。出勤前の朝は忙しいので、ボトルだけ購入する。しかし、返却時は時間があるので、店内で販売しているスイーツなどを購入する人が増えていったのだ。

 近鉄名古屋駅の近くで営業していたときの売上構成比を見ると、カフェが95%を占めていて、物販が5%。しかし、現在(平日)は、物販が70%、カフェが30%ほど。休日はカフェが70%ほどになるが、それでも以前の店とは違って、緑茶やスイーツなどが売れているのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.