リテール大革命

【まとめ】無人店舗元年! 2021年にはどのような店舗がオープンしたのか?売れっ子定員も登場(2/3 ページ)

» 2021年12月28日 09時00分 公開
[熊谷紗希ITmedia]

オープン初月で黒字化を達成した「古着店」

 5つの秘密が隠された「秘密のさくらちゃん」という名の古着店がある。20年1月に東京都の武蔵村山で1号店をオープンした。現在は東京都内、埼玉県内と岩手県内に合計5店舗を展開している。コロナ禍での開業にもかかわらず、全店でオープン初月の黒字化を達成している。

 5つの秘密とは「無人店舗」「さくらちゃん」「カメラ付きモニター」「万引き防止カメラ」「洋服の大量廃棄問題の解決」だ。

新所沢店の秘密のさくらちゃん

 「無人店舗」「万引き防止カメラ」はイメージがつくだろう。その他の3つの秘密を見ていこう。まず、さくらちゃんとは誰なのだろうか? 答えは店内にいる「マネキン」だ。お店は24時間無人で営業しているため、人がいない時間帯もある。人がいないさびしさをカモフラージュする目的で設置された。しかし、意外にもさくらちゃんが着用する古着が人気で買い求める客も多いらしく、”売れっ子店員”だという。

売れっ子店員のさくらちゃん

 「カメラ付きモニター」は会計時に役に立つ。購入商品が決まったら、モニターの前に立ち、スピーカーに向かって話しかける。そうすると、モニターに店員が映し出され、会計を手伝ってくれる仕組みだ。客がモニター越しに話しかけてきたときのみ応答すればいいため、1人が同時に複数店舗の対応をしているという。24時間稼働し続ける必要はあるものの、他店舗オーナーと持ち回りでシフトを組み、対応している。

カメラ付きモニター

 最後の秘密はアパレル業界が抱える課題である「大量廃棄問題」だ。秘密のさくらちゃんでは、一部店舗に古着の回収ボックスを設けており、客に不要になった服、カバンや靴などを持ってきてもらうようお願いしている。回収ボックスには1店舗だけで週に200キログラムほどの古着が集まる。まだ着られるものは店頭で販売し、その他は海外に送るなど積極的にリユースに取り組んでいる。

古着の回収ボックスを設置している(画像:ママハイ提供)

 秘密のさくらちゃんを運営するのは3人の子どもを持つ母親が立ち上げたママハイ(東京都中野区)だ。子育てと仕事の両立が難しく、一時は働くことを諦めていたが、無人店舗として展開することで、子どもとの時間も確保しつつ、仕事ができる状態を作り上げた。

 18年に発表された内閣府男女共同参画局の資料によると、出産前有職者率72.2%のうち第1子の出産を機に離職する女性は約半数に上るという。日本が抱える大きな課題を無人店舗が解決する可能性を示した事例としても見ることができるだろう。

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