「穴が開いたら新品と交換」 ”永久交換保証”の靴下ビジネス、赤字にならないの?人生最後の靴下になる?(1/2 ページ)

» 2021年12月22日 08時30分 公開
[堀井塚高ITmedia]

 靴下と聞くと「3足1000円ほどで販売されている消耗品。ゴムが緩んだり穴が開いたりしたら買い換えるもの」と思うかもしれない。

 ところが、「永久交換保証 つま先、かかと、足底部分に穴が開いたら新品と交換します」という採算度外視とも思える保証を付けた靴下を販売するメーカーがある。東京都文京区根津に本社兼ショールームを構えるグレン・クライドだ。

グレン・クライドの橋本満社長。場所は日比谷OKUROJI店

 グレン・クライドの橋本満社長は「4年ほど前に取引先に紹介されて、コーデュラと呼ばれる特殊なナイロンの存在を知った。この糸はアウトドア用のバックパックにも使われるほど耐久性が高い。この糸を使って靴下を作ってみたくなった」と永久交換保証の靴下「LIFE LONG」ブランドの開発理由を説明する。2017年にクラウドファンディングサイトMakueakeで販売を開始した際は、目標金額達成率400%を超える反響があったという。

 一般的な靴下の場合、カケンテストセンター(東京都中央区)などが実施している「摩耗試験 JIS L 1096 F-1(スチールブレード法)」(生地に荷重をかけて摩擦子でこするテスト)で500回程度をクリアすれば商品として市場に出せるという。大手メーカーの製品でも1000回ほどだ。

 一方、生地の40%にコーデュラを使用しているLIFE LONGの靴下は桁違いの回数をクリアしている。「LIFE LONGの靴下は3万回でも穴が開かなかった。交換の保証期間は3年でも5年でもよかったが、ブランディングの意味で永久保証にした」(橋本社長)

LIFE LONGブランド。テストでは、3万回を超えても穴が開かなかった

 LIFE LONGブランドとして販売されているのは、薄手の「永久交換保証ビジネスソックス」(2200円)と、厚手の「永久交換保証ソックス」(2200円)、くるぶし丈の「永久交換保証ショートソックス」(1980円)の3種類。3足1000円の靴下と比べると7倍弱の価格だ。

 3足1000円の靴下を愛用している筆者の経験では、靴下の“寿命”はせいぜい2〜3年。それくらい履くと、つま先に穴が開いたり、かかとが擦り切れたりしてしまう。たとえ価格が7倍でも「永久交換保証」と言われると「これで一生、靴下を買い足さなくても済むなら……」という気になってくる。

店先でも「永久交換保証」を宣伝

 そもそも2000円前後で販売している靴下に永久交換保証を付けてビジネスになるのか。橋本社長は「永久交換保証はブランドの宣伝にはなっても、ビジネスのリスクにはならない」と自信ありげだ。どういう仕組みなのか?

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