山手線の内側2つ分の土地が放出予定? 「2022年問題」は本当に“不動産ショック”をもたらすのか古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)

» 2022年01月02日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

「2022年問題」が不動産市況に冷や水となる?

 「2022年問題」と聞くと、今年特有の事象であると思われがちであるが、実際は22年から断続的に発生してくる問題であり、中長期的な観点でも不動産市況に影響を及ぼす可能性がある。

 具体的には生産緑地の指定が解除された広大な土地が不動産マーケットへ大量に放出されることで、都市部に新たな土地が供給され、不動産価格が下落するのではないかという問題である。

 そもそも生産緑地とは、1992年の改正生産緑地法施行に伴い指定された都市部の農地をいう。バブル経済による都市部への急激な人口流入と不動産市況の高騰によって、かつての農地が次々と宅地へ転用され、都市環境が悪化してきた状況を問題視した政府が、都市部における農地を保全することを主な目的として法整備を行ったものである。

 生産緑地に指定された農地は、固定資産税・相続税・贈与税という3つの観点でメリットを受けられる。

 まず固定資産税について、本来10アールあたり数十万円となるべきところ、生産緑地として農業等を営む義務を果たせば、数千円の税負担で済む。

 また、生産緑地を譲り受けた場合に、贈与税や相続税の納税猶予が受けられるだけでなく、その後も20年間農業を営むなど、一定の要件を満たせば相続税の免除も受けられる。

 しかし、生産緑地の指定から30年が経過すると、これらのメリットを享受できなくなる。つまり、生産緑地であっても固定資産税が最大で100倍までに膨らむし、相続税の納税猶予も受けることができなくなる。

 そうなると、農業を営む義務があって、建物の建築が厳しく制限される生産緑地の指定を受け続けるインセンティブはほぼ皆無だろう。現在、生産緑地の指定を受けている生産緑地のほとんどが法施行時の1992年に指定を受けた土地となる。2022年は生産緑地の指定から30年が経過し、生産緑地として保有するメリットがなくなった大量の土地が放出されてくることになる。

【訂正:1/7 12:10 生産緑地の指定年を初出で1972年としていましたが、正しくは1992年です。お詫びし訂正いたします。】

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