毎年、鳥取県と同じ人口が自然に消える日本は、そんな人類の脅威にちょっとばかし早く直面しているだけの話なのだ。
と口走ると決まって飛び出すのが、「人口がちょっと減っても、日本が誇る高い技術力でカバーできるのでそこまで不安にならなくていい」という楽観論だ。ロボット、AIなどのテクノロジーが普及すれば、労働力不足を補い、あふれかえる高齢者にも優しい社会が実現できるので問題ナシというわけだ。
実際、日本の経済人や有識者は、30年くらい前からこの楽観論を繰り返し唱えている。本連載で紹介したように日本では50年前から現在のような状況になることが正確に予測できていた(参照リンク)。そこで解決策として主張されていたのが、「外国人労働者の受け入れ」と「技術革新」の2本柱だったのだ。
例えば、16年に厚生労働省が、経営者や有識者を集めて、35年を見据えた新しい働き方を検討する「働き方の未来 2035」懇談会を開催したが、その報告書にも以下のような提言がなされている。
『この技術革新は、日本経済にとって大きなチャンスでもある。少子化、高齢化による人口減少、労働人口の減少、過疎化という日本が直面している課題の解決に大きく寄与し得るからだ』(働き方の未来 2035 報告書)
「確かにウチの社長もよく“人口減少はDXで解決だ”みたいなこと言ってたな」と納得する人も多いと思うので、このようなことを指摘するのは大変気が引けるが、そのように「技術力があればなんでもうまくいく」という根拠のない技術崇拝を何十年も続けてきたから、日本経済がここまでダメになってしまったのである。
日本という国を客観的に俯瞰(ふかん)すれば、技術革新で人口減少を乗り越えることは不可能だ。どんなにAIやロボットが飛躍的に進化を遂げたとしても決して、「消費者が増える」ことにはつながらないからだ。
AIやロボットが社会に普及したところで、居酒屋やレストランで食事をしてくれるわけがないし、国内観光をしてGo To トラベルを利用してホテルに宿泊することもないし、初売りセールに行って衣類や生活用品を買うこともない。ロボットが人間のように人権と市民権を得て暮らすというSFの世界が実現しない限り、「消費活動」というのは、血の通った人間にしかできないのだ。
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こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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