開戦前から帝国陸海軍は、対米戦争は絶対に負けるという分析をしていた。経済力、石油の備蓄を見れば明らかだった。
しかし、一部のリーダーが国民やマスコミの「20万人もの兵士が死んで、国家予算の7割も注ぎ込んだのに、今さら中国大陸から撤退などできるか!」「屈辱的な条件を提示してきた米国に目にもの見せてやれ!」というイケイケムードに押されて、この無謀な戦に踏み切った。
コミンテルン(国際共産主義運動の指導組織)の陰謀だ、欧米にハメられたなんだと見苦しい言い訳をする人もいるが、そういう謀略があるのが世界の現実だ。
つまり、負け戦に突っ込んだのは、日本のリーダーたちが精神論に流され、現実を直視できず、「日本人の勇ましさをもってすれば、石油が底をつく前に米国人が白旗を上げるだろ」という根拠ゼロの楽観論にすがってしまったことが大きいのだ。
賃上げをしなくてはいけないという現実から頑なに目をそらし、「人口減少は技術革新でスカッと解決!」と叫ぶ令和の企業経営者にも同じにおいがプンプン漂う。
毎年多くの国民が消えるという意味では、人口減少も「戦争」と言っていい。80年前と同じ轍(てつ)を踏まぬよう、今度こそしっかりと現実を直視したい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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