インバウンド活況から一転、需要が激減したホテル業界。その中で筆者は「ボーダーレス化」が顕著になったと指摘する。本記事【後編】では、今後のホテル業界に求められる“目線”と、筆者が考えるホテルの“賞味期限”について記す。
前編「コロナ禍のホテルで激増した『テレワークプラン』 “大きな声では言えない”ニーズがあった!」では、コロナ禍で意外に堅調だったカップル需要について分析、健闘を見せたレジャーホテルについての実情にも触れた。
実はこうしたカップルによるデイユース需要は、コロナ禍前であればレジャー(ラブ)ホテルが十八番とされ、表向きにはニュースにならなかった。しかし、過去にさかのぼると、伝統的な高級ホテルでも午後チェックイン/深夜にチェックアウトというケースは散見されたという。
チェックアウトした客室をすぐに清掃し、もう一度販売するスタイルは、現場では常識的な運用として捉えられてきた。最初からデイユースで売れば効率的だし、もっと需要は取り込めるのだろうが、表立ってそれをやってしまっては「高級ホテルなのにラブホテル?」と格が下がる。
いずれにしてもコロナ禍は「高級ホテルが堂々とデイユースを売れるようになった」とみることもできる。一方で、宿泊特化型ホテルでも、雰囲気を重視したホテル作りやデイユースの積極的な売り出しなど、あからさまなカップル需要奪取の傾向がみられる。
事実、郊外の某レジャーホテル運営者が危惧していたのが、カップル需要が宿泊特化型ホテルへ移行していることだという。
コロナ禍においても、いや、コロナ禍ゆえスモールラグジュアリーホテルが奮闘していることは、「1泊20万円超も コロナ禍なのに高級ホテルが続々開業するワケ」で指摘した。それもやはり、カップル需要にフォーカスしたハード作りや運営スタイルを際立たせてきた施設の強さが顕著になったともいえる。
旅行の形態を変化させたコロナ禍であるが、従来の常識が通用しなくなっていることは何よりホテル自身が最も感じていることだろう。景況による影響はカップル需要においては別次元の話であることを述べてきたが、それは女性に支持されるホテルの強さとも換言できる。すなわち、ホテルの運営も女性目線の重要性がよりフォーカスされているのだ。
Go Toトラベル再開や旅行需要の戻りも期待される2022年のホテル業界。今後出張需要も望めないといわれる中、宿泊特化型ホテルも観光需要の取り込みに向け、若い世代からシニア層まで“3世代”に幅広く支持される観点が重視される。
幅広い世代が快適なホテルとなるには、何より“女性目線”が肝要であることは確かだ。
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