インタビュー
» 2022年01月12日 08時30分 公開

「遺体ホテル」に「マンション坊主」 2040年の多死社会は、葬儀ビジネスをどう変える?1日に4600人が亡くなる(1/3 ページ)

日本は2040年に多死社会を迎える。1日に約4600人、年間に約168万人が亡くなる計算だ。そんな状況下で「葬儀ビジネス」はどう変わっていくのか? また、多死社会が終わり、縮小し始める市場で、事業者たちはどうするべきなのだろうか?

[熊谷紗希,ITmedia]

 「日本は2040年に多死社会を迎える」――。厚生労働省が発表した2020年版の「厚生労働白書」がそんな可能性が示唆している。40年の年間死者数は約168万人、つまり1日で約4600人が亡くなる計算となる。これは平成元年にあたる1989年(約79万人)の2倍以上だ。

日本は2040年に多死社会を迎える(画像:ゲッティイメージズより)

 その兆候はすでに数字にも現れている。05年に年間死亡者数が出生者数を初めて上回った。そして07年以降、死者数が出生数を上回り続けている。16年には出生者数が100万人を切ったことが大きなニュースとなった。18年後に到来する多死社会に向けて、その周辺のビジネスはどう変わっているのだろうか?

死亡数の推移(出所:厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」)

「遺体ホテル」が繁盛する未来

 死者数が増える中で注目を集めているビジネスの1つが「遺体ホテル」だ。火葬日まで遺体を安置させておく場所のことを指す。

 かつて、火葬前の遺体は自宅安置が一般的だった。しかし、マンション暮らしが増えたことなどが理由で、自宅での一時安置が難しくなってしまった。また、葬式をせずに火葬する「直葬」を選んだとしても、墓地埋葬法によって死後24時間以内は火葬が禁止されているため、その間はどこかに安置しておく必要がある。しかし、首都圏は特に火葬場が少なく、火葬能力が死者数に追いついていないのが現状だ。

 横浜市で2棟の遺体ホテルを運営するニチリョク(東京都中央区)の葬祭事業部、横田直彦課長は「遺体ホテルの需要は高い」と話す。

ニチリョクが運営する遺体ホテル「ラステル新横浜」

 「横浜市には公共の火葬場が4カ所、民間事業者が運営する火葬場が1カ所あります。横浜市で最も新しい火葬場は30年以上前に建設されたもので、そこから増えていません。一方、亡くなる方の数は右肩上がりです。現在は、火葬まで4〜5日間待たなければいけない状況です」(横田氏)

 同社が新横浜で運営する遺体ホテル「ラステル新横浜」は、全20体の遺体を安置できる霊安室と面会室を備えている。遺族がホテルのロビーに設置されているタッチパネルから面会したい故人を選択すると、霊安室の機械が自動で故人が入ったひつぎを面会室に運び入れる。遺族は面会室に入室し、故人と対面できるという仕組みだ。

 稼働率は「常に10体前後」(横田氏)だという。複数のひつぎを収容できる霊安室以外にも、親族が一堂に会せるように個室も7部屋用意している。24時間対応で、価格は霊安室が1日1万円、個室は2万円だ。

面会室(左)、個室(右)

 遺体ホテルが盛況なのであれば、多死社会に向けて火葬場の新設が進んでもいいような気もする。なぜそういった動きが起こらないのか? 来る多死社会との深い関係が見えてくる。

【注釈:遺体安置に関して厚生労働省に確認したところ、死後24時間以内の火葬は禁止されているが、それ以外に法律で明確に定められていることはないとの回答でした。また、横浜市にも同様に確認しましたが、遺体安置に関して条例で定めていることはなく、遺体ホテルも問題ないとの回答が得られました】

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