トクラス事業部の渡邉裕太担当課長は「フィンテック事業、つまりエポスカードとのシナジーを期待している」と説明する。エポスカードは丸井グループが提供するクレジットカードだ。マルイ トクラスの入居者にはエポスカードへの登録を必須としていることに加え、家賃や共益費は全てエポスカードで支払う仕組みになっている。
シェアハウス事業の狙いは、エポスカードを入居者のメインカードにすることだという。家賃や共益費など、生活の多くを占める出費がエポスカードに集約されるとなれば、必然的にメインカードとして利用する人も増えるだろう。
「シェアハウス完成後、入居者のエポスカード利用率に変化はあったか」という質問に対しては「現時点で話せることはない」(渡邉氏)とのことだったが、マルイ トクラスの入居者限定で丸井吉祥寺店の一部テナントで優待を受けられるようにするなど、店舗利用を促進する取り組みを行っている。
入居者の女性は「あまり頻繁には行かないが、無印良品と100円ショップにはよく行く。必要なものをマルイで買ったり、コーヒーが飲みたいときにマルイ内のスーパーに行ったりしている」と話す。
そのほか、クレジットカードから利用者属性や購買データを収集し、今後の事業や百貨店の店舗設計に生かすこともできるだろう。その点についても「現時点で話せることはない」(渡邉氏)という回答だった。
実際、丸井グループの22年3月期第2四半期決算資料を見ると、同社がフィンテック事業に力を入れていることが分かる。コロナ禍の影響はあるものの、小売事業の営業利益は4億円で、前年同期比35%のマイナス7億円となっている。
一方、フィンテック事業の営業利益は約238億円で、前年同期比105%でプラス12億円。コロナ前の19年同期と比較しても113%伸長と着実に成長していることが分かる。また、同社はエポスカードの家計シェア(家計の出費に占めるエポスカード決済の割合)最大化の取り組みを強化し、5年後の取扱高として現在の2倍にあたる5.3兆円を目指すとしている。
丸井グループの新たな挑戦となるシェアハウス事業は、同社の成長を支えるフィンテック事業を加速させるエンジンとしてだけでなく、コロナ禍やECの台頭で打撃を受ける小売事業の救世主になれるか、勝負どころを迎える。
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