そこでよく俎上(そじょう)に上げられるのが、小型のライフスタイルショップ「ハンズビー」だ。行ったことがある人は分かると思うが、扱っているものがコスメ、文具、生活雑貨とロフトをコンパクトにしたような店舗形態なのだ。「ハンズらしさ」がないので熱心なファンたちの食指は動かない。コロナ前から「近年は若い女性を照準にした小型店のハンズビーを大幅に増やしたが、全体で1店舗あたりの売上高は減少傾向」(日本経済新聞)だった。
ただ、これだけをもってして、「ハンズらしさ」が失われているという指摘は東急ハンズで働く人々からすればかなり不本意だろう。今も現場の販売員たちは、「ハンズらしさ」を守るために必死に奮闘しているからだ。
その代表が18年から、個性的な販売員を「店主」と見立て、仕入れ権限なども与えて、より独創的な売り場づくりを目指す「Hi! Tenshu」プロジェクトである。これは新宿店でスタートして好評を得て21年4月には第2弾として梅田店、博多店でも行われた。つまり、「らしさ」を維持するどころか、より研ぎ澄ますような取り組みも真摯(しんし)に続けているのだ。
では、何が低迷の原因なのか。これはあくまで筆者の憶測だが、そもそも東急ハンズのコンセプトに「柔軟さがない」ことが大きいのではないかと感じている。
「品ぞろえが豊富」とか「店員が商品のプロ」というのは確かにかつては「東急ハンズならではの強み」だった。しかし、今はアマゾンなどの巨大ECでなんでも買えてしまう。商品の専門知識を持っているのも今や店員だけではなくなっている。SNSやYouTubeでは、商品の解説やレビューをする「玄人はだしのユーザー」があふれている。つまり、「東急ハンズならではの強み」が急速に失われつつあるのだ。
こういう状況に追いやられた場合、時代の変化に柔軟に対応をして、ビジネスモデルや店舗コンセプトの根本的な見直しをしなくてはいけないが、東急ハンズはいまだに「品ぞろえが豊富」とか「店員が商品のプロ」という「ハンズらしさ」に固執しているように見える。そのガンコさ、硬直した姿勢がマイナスに働いてしまっているのではないか。
それがうかがえるのが目下、東急ハンズが収益向上の切り札として考えている「プライベートブランド」(以下、PB)だ。
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