株主優待もデジタル化? 上場企業がプレミアム優待倶楽部を導入する“裏”の理由金融ディスラプション(1/3 ページ)

» 2022年01月27日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 企業が株主に送る株主優待も、デジタル化が進みつつある。クオカードや商品券ではなく、ポイントを付与しネットにアクセスしてもらって好きな商品を選べる「プレミアム優待倶楽部」の導入企業は71社を超えた。

 株主に郵送する必要はないし、カタログギフトなどとも違い資源の無駄にもならない。SDGs的な観点から、企業は優待のデジタル化に踏み切ったのかと思われがちだが、実はここにはもっと深い理由があった。プレミアム優待倶楽部を運営する、ウィルズ(東京都港区)の杉本光生社長に聞いた。

ポイント型のオンラインカタログギフトサービス「プレミアム優待倶楽部」

実は株主優待が出発点ではなかった

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 「株主優待ありきで開発したものではない。もともとのコンセプトは株主管理プラットフォーム。株主リストをデジタル化して、株主と企業のコミュニケーションを充実させることが目的だ」。杉本氏はこう話す。

 実はウィルズのメインの事業は、上場企業のIR(投資家向け広報)支援だ。企業が株主に会社の実態を正しく知ってもらうために、さまざまなサービスを提供している。 

 そんな中、10年ほど前に大手食品会社から「16万人の株主の意見を経営にフィードバックしたい。デジタル化できないか」と言われたのが、プレミアム優待倶楽部開発のきっかけとなった。

ウィルズの杉本光生社長(ウィルズ提供)

 企業は株主に総会の招集通知、決議通知などを送るが、これは封書を使っており、印刷コストなどすべて含めると1通当たり500円から1000円くらいかかっているという。さらに、封書でやっている限り、株主との双方向のコミュニケーションは取れない。これを変えようという試みだ。

 株主の情報は基本的に信託銀行が管理しており、そこにあるのは名前と住所だけ。メールアドレスも電話番号も登録されていない。どうやったら、株主に連絡先などの情報を追加で登録してもらえるか。「ここで出てきたのが、ネット上でポイントを付ける仕組み。ポイントを付ける代わりにメールアドレスなどを入力してもらい電子化できれば、コストも下がるし、双方向のコミュニケーションも行えるようになる」(杉本氏)

 そして、そのポイントを優待と連携させれば、新たな株主獲得策にもつながる。こうした発想で2015年9月にプレミアム優待倶楽部がスタートした。

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