蛇足ながら若干説明しておくと、ホームセンターとは、郊外の広い庭付き一戸建ての住宅で、成人家族の人数分のクルマを持っていて、ガーデニングを楽しみながら、ペットも飼っている、といったイメージの世帯に必要とされる業態であるため、狭小住宅や集合住宅が多い大都市圏ではあまり必要とされてはいない。
首都圏内側の住民にとって、そもそもクルマを保有していないから郊外ロードサイドにあるホームセンターに行くことがないというケースも多い。地方で大きく成長したカインズといえども、ホームセンターという店舗形態では、大都市圏へ本格進出することはほぼ不可能だったといえるのだ。
そもそもカインズの高い競争力の源泉は、プライベートブランド(PB)商品の開発力にあるといわれている。郊外型住生活に関する多様な商品群の中から、定番品を中心にPB化を地道に進めており、センスとコストパフォーマンスを兼ね備えたPB商品の品ぞろえは、業界内トップといっていいだろう。住関連、生活関連のPBを武器に今やリーズナブルなホームファッション雑貨PBのトップランナーとなっているニトリの背中が見えてきている。
こうした点を背景に、カインズは自前で大都市攻略にチャレンジし始めていた。「STYLE FACTORY」というPBを軸に大都市生活者向けの業態を開発し、横浜みなとみらい、ららぽーと海老名、ららぽーと立川立飛、ららぽーと名古屋みなとアクルスなど、大都市周辺部に店舗をオープン。成否の判断はこれからなのであろうが、郊外型住生活をメインとしていたところからの転換は、王者カインズをもってしてもなかなか簡単ではないはずだ。
こうしたカインズの状況を考えると、ハンズをパートナーにしたことの意義がおのずと分かってくる。カインズの高家正行社長は「ハンズをカインズに変えることは決してない」「カインズの基盤を活用してハンズを磨いていく」と語っている。ハンズの本来的強みを生かして、カインズの戦力とする、という方向性が見えてくる発言だが、実際にはどうなっていくのだろうか。
カインズに売られた「東急ハンズ」は、なぜライバル「ロフト」と差がついたのか
ワークマンやカインズを育てた群馬発「ベイシアグループ」の正体
「国道16号」を越えられるか 首都圏スーパーの“双璧”ヤオコーとオーケー、本丸を巡る戦いの行方
イオンとヤオコー、スーパー業界の優等生がそれぞれ仕掛ける新業態の明暗
競合は無印とニトリか 「イオン・キャンドゥ」タッグで再編進む100円ショップ業界の今
オーケーに関する2つの誤解 関西スーパーが守ったものと失ったものとは?
マツキヨ・ココカラ不振の裏で、「肉・魚・野菜」の販売にドラッグストア各社が乗り出す納得の理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング