「関西スーパー争奪戦」は始まりにすぎない!? 関西進出を狙う「オーケー」の恐るべき“実力”34期連続増収(2/4 ページ)

» 2022年01月31日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

オーケーの最大の強みはEDLP

 オーケーの経営方針は「高品質・Everyday Low Price」です。

 これは企業理念といってもいいほど同社の核となっているものです。

 高品質であり、かつEveryday Low Price(エブリデー・ロープライス)を徹底しようとしており、質と価格を保証する同社の志を表した表現です。

 EDLPとは、その日限りの目玉商品や特売価格を設定する代わりに、ほとんどの商品を毎日同じ低価格で販売するやり方のことです。米国の小売業最大手・ウォルマートの経営理念から生まれたもので、1980年代から使われてきた用語です。

 同社のEDLP導入も早く、86年にはEDLPを経営方針に加えています。そして2001年に経営方針を徹底するために特売チラシを廃止しました。オーケーは店内でチラシを配布することはあっても、他スーパーのように折込チラシを配布することは一切ありません。結果的に販促費がかからず、経費を抑えられます。なんと、同社の21年度販促費率は0.03%(20年度は0.07%)です。販促費がほとんどかかっていないのです。無駄な経費を徹底的に削り、その分を顧客に低価格・高品質という形で還元する。これがオーケーの最大の強みであるEDLPです。

 また、同社には「借入無しで年率20%成長の達成」という経営目標もあります。設定している目標が高いのですが、それに近い経営成績を毎年あげてきているところにオーケーのすごみがあります。創業者・飯田勧会長の慧眼(けいがん)とは、EDLPこそが小売業の生きる道と決意して、それを徹底することにあったといえます。

 さて、ここで同社の経営数値を、話題となった“関スパ争奪関係企業”と比較してみます。

 売り上げは、H2Oが7391億円とオーケーよりも大きくなっています。阪急・阪神百貨店なども傘下に持つ総合流通業ですから当然といえば当然です。

 売上総利益率も、H2Oは28.7%で、関スパの24.4%とオーケーの22.0%を上回ります。

 驚くのはここからです。販管費率は、オーケーが16.0%。一方、H2Oは29.3%、関スパは23.8%と大きく差がついています。オーケーはローコスト経営の会社といえます。

 結果的として、本業のもうけを示す営業利益率は、オーケーが6.0%あるのに対して、H2Oはコロナの影響もあってマイナス0.6%。営業損失の状態です。関スパは2.1%の利益を出しています。しかし、営業利益はオーケーが300億を超えている一方で、10分の1以下です。

 収益性ではオーケーがダントツに優れており、総合流通業であるH2Oをはるかに上回る高収益企業だといえるのです。

 オーケーの経営面における最大の特徴は、この経費率の低さにあります。実は、業界の大手企業と比較しても同社の経費率はダントツの低さであることが分かります。

 コストコは世界の流通小売り業の中でもダントツの販管費率の低さで有名です。ただ、オーケーの販管費率16.0%という数字は、食品スーパー業界の中では圧倒的な低さです。販管費が低いと利益も低くなるのが通常で、コストコも営業利益率は2.4%ですが、オーケーは6.0%です。イオン、セブン&アイ、関スパなどと比較しても大きな差があることが分かります。

 一方、オーケーの店舗は好立地を確保しており、家賃の高いところにも出店していますし、建物にもある程度の投資をしています。決して安普請ではありません。「必死で経費を削っている感覚は現場にはない」(飯田会長)といいます。

 オーケーは明らかに無駄な経費を抑えつつ、高い利益を上げ続ける会社です。そして、既存店の売り上げを確実に伸ばし、基本的に借金をせずに新規出店していける体力をつけています。結果的にキャッシュで1000億円以上(!!)を持つ企業になっています。

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