クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

逆境のマツダ 大型FR導入で息を吹き返せるか?鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(1/3 ページ)

» 2022年02月01日 07時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]

 今年、目の離せないメーカーがあります。それがマツダです。

 実のところ、コロナ禍でのマツダのビジネスは散々なものでした。2021年3月期の決算を見ると、グローバルの販売台数は前年比マイナス9%の128万7000台。当期純利益はマイナス317億円という大赤字です。20年の前半は、さらに悪く、最悪900億円の損失になるか? と思われるほど調子が悪く、300億円程度のマイナスで済んで、まだ良かったというほどです。

マツダ純利益の推移

 しかし、歴史を振り返れば、マツダは、これまで何度も、もっと辛い状況を耐え、そして、そこから復活してきたメーカーでもあります。

原爆、ロータリー、バブル崩壊……

 まず、太平洋戦争の最後に、マツダのある広島の街は、原子爆弾によって焼き払われました。戦後の高度経済成長期を経て、1967年代には、世界でただ一社、ロータリー・エンジンを実用化。しかし、70年代のオイルショックによって、ロータリー・エンジンは「燃費が悪い」と見られ一気に経営が悪化しました。数千人の社員を全国のディーラーに送るなどの再建策も行われました。

 その後、日本経済は80年代の好景気、いわゆるバブル期を迎えます。それをチャンスと見たマツダは、一気に販売チャンネルを5つに増やす計画のもとに膨大な数の新型車を投入。ところが、これもバブル崩壊と共に夢と消えてしまいます。

 このマツダの窮地を救ったのがフォードでした。その後、90年代後半から2000年代にかけて、マツダはフォードの一員として成長します。しかし、やっぱりマツダに、またも危機が訪れます。それが08年のリーマンショックでした。なんと、マツダの08年の決算は、715億円の損失。翌09年も500億円の損失。2年連続の大赤字で、倒産が噂されるほどの辛い時期を送っていたのです。

 でも、そんな逆境をマツダは克服しました。それが11年に発表した初代「CX-5」からスタートする新世代商品群です。新世代技術「スカイアクティブ」と「魂動デザイン」、そして「人馬一体の走り」を特徴とする新世代商品群によって、マツダは息を吹き返します。これらの新世代商品群の評判は非常に高く、日本カー・オブ・ザ・イヤーには、12年発売の初代「CX-5」をはじめ、14年の「デミオ」、15年の「ロードスター」が選定されています。

日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した初代「CX-5」

 そうした逆境から復活し、さらなる高みを目指すというのがマツダの歴史と言えるでしょう。

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