今、日本で最も数多く売れている輸入車は何かといえば、それは「メルセデス・ベンツ」です。
2021年1月から10月までのメルセデス・ベンツの新車登録台数は、累計4万3156台(日本自動車輸入組合調べ)。2位のフォルクスワーゲンの3万0038台から、1万台以上も多く売れています。記録を振り返れば、メルセデス・ベンツの年間ナンバー1は、15年から6年連続。この調子では、今年もメルセデス・ベンツの優位は揺るがず、7年連続の輸入車ナンバー1が確実という様相です。
しかし、メルセデス・ベンツが日本で一番多く売れるブランドになったのは、ここ最近の話。かつてのメルセデス・ベンツは「高級車の象徴」であり、販売される数もそれほど多いものではありませんでした。
例えば昭和の時代、1980年代前半のメルセデス・ベンツの販売数は、年間5000台規模。なんと、今の10分の1以下しか販売されていませんでした。そして、そのころから、つい最近になるまで不動の輸入車ナンバー1の地位を守っていたのが、フォルクスワーゲンでした。
フォルクスワーゲンもメルセデス・ベンツも、どちらもドイツの自動車メーカーです。ところが、フォルクスワーゲンはドイツ語で「フォルクス=国民、ワーゲン=クルマ」、つまり、国民車という名前からもあるように、大衆車であることが特徴です。1950年代から60年代にかけて大ヒットしたフォルクスワーゲン・ビートルや、70年代からのゴルフといった、比較的小さく、誰にでも買える手ごろな価格がウリのメーカーです。
日本市場でもフォルクスワーゲンの看板モデルであるゴルフは、常にベストセラーの座を争うほど高い人気を集めている存在です。直近の年間ランキング(日本自動車輸入組合調べ・外国メーカー車モデル別新車登録台数順位)を見ると、2003年から15年にかけてゴルフは販売ナンバー1であり、その後はミニに王座を譲るものの、19年まで2位、20年は3位の座に留まっています。
一方、メルセデス・ベンツは、1886年に「ガソリン自動車を発明」した老舗中の老舗自動車メーカーです。100年も前から自動車を生産しており、世界中の国家元首やVIPが愛車にするなど、素晴らしい高性能なクルマを作るメーカーとして知られる存在です。
そんな「高級車の象徴」であるメルセデス・ベンツですから、クルマは大きく立派なものが中心でした。もちろん、値段も驚くほど高額です。実際に1980年代前半までのメルセデス・ベンツは中型と大型セダンがラインアップの中心で、 “小さくて、手ごろな価格のメルセデス・ベンツ”なんて存在はあり得ません。それでは、数多く売れるわけはありません。ですから、その当時のベストセラーの座は“大衆車”であるフォルクスワーゲンのものとなっていたのです。
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