実は日本で一番に売れている「メルセデス・ベンツ」 高級車の象徴はなぜ輸入車ナンバー1に至ったのか?鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(4/4 ページ)

» 2021年11月11日 07時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]
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ディーゼルゲートで失速したライバル

 一方、大衆車の代表格であるフォルクスワーゲンは、どうだったのか? 端的にいえば、メルセデス・ベンツほどラインアップを拡大することができませんでした。「ゴルフ」だけでなく、より小さな「ポロ」、ミドルサイズの「パサート」「アルテオン」、SUVの「ティグアン」などを増やしていきましたが、大型セダンを加えることに失敗します。SUVもメルセデス・ベンツほど多くを用意することができませんでした。

 さらにフォルクスワーゲンは大失態を起こします。15年の「ディーゼル不正事件」です。ディーゼル・エンジンの排気ガス規制に対して、フォルクスワーゲンが不正な制御を行っていたのです。この不祥事を機に日本でのフォルクスワーゲンの販売は減速。ついにメルセデス・ベンツに1位の座を明け渡してしまうのです。

 ちなみに、高級車の代表格として幅広いラインアップを揃えるようになったメルセデス・ベンツですが、“最上級”という冠は、現在のところ返上した格好です。今では「ロールス・ロイス」や「ベントレー」といった、より高額で高級ブランドが登場しています。もちろん、メルセデス・ベンツも、最上級を諦めたわけではなく「メルセデス・マイバッハ」という、メルセデス・ベンツよりも上位のブランドを用意して追撃する姿勢を取っています。

 ラインアップの拡大、ブランドの敷居を下げる努力、さらには上位ブランドへの挑戦など、全方位的に対策を進めるメルセデス・ベンツ。その努力が、日本でナンバー1の地位を獲得できた理由ではないでしょうか。

筆者プロフィール:鈴木ケンイチ

1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。


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