クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

今年一番売れたクルマは? ビッグヒットの裏にあるカラクリ鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(1/3 ページ)

» 2021年12月09日 07時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]

 2021年がもうすぐ終わりになろうとしています。この原稿を手掛ける12月上旬では、まだ1年間の集計は出ていませんが、今年のベストセラーカーは、ぼぼ決まりでしょう。それは、トヨタの「ヤリス」です。

 日本自動車販売協会連合会・乗用車ブランド通称名別順位で、1月から11月の販売台数を積み重ねてみれば、ヤリスの販売台数は19万6020台。2位となるトヨタ「ルーミー」の12万4937台を大きく引き離します。最終の12月の数字はまだ出ていませんが、ヤリスの首位は揺るぐことはないはず。つまり、ヤリスは昨年に引き続き、2年連続での新車販売ランキング1位の獲得となります。

2021年、最も売れたクルマはヤリス

ヤリス、ベストセラーの理由

 ヤリスがベストセラーになった理由は、いくつも考えられます。

 まず、大前提として、「クルマとしての出来の良さ」があります。デザインと性能が良くて、商品として魅力的。こうした前提がなければ、ベストセラーの座は獲得できません。ヤリスは、トヨタの世界戦略車として最重要車種のひとつです。当然、相当に力の入れた開発が行われました。

 ちなみに、今回の新型ヤリスの市場投入は19年の予定でした。しかし、実際の投入は20年2月。1年間ほども遅れたのは、開発が途中で思うように進まなかったのが理由です。「出来の悪いまま、予定通りに発売することもできたけれど、発売を1年間先送りしてでも問題を解決する」という裏事情があったとか。トヨタの社長である豊田章男氏が社長就任以来言い続けてきた「もっといいクルマづくり」という姿勢が、ヤリスの発売1年延期の根底にあったというわけです。

 1年間の発売延期により、ヤリスの開発は、より充実したものとなり、ヤリスは非常に充実した内容で登場しました。プラットフォームを一新し、スポーティなルックス、きびきびとした軽快な走りを実現。1リッターと1.5リッターのガソリン・エンジン車に加えてハイブリッド仕様も用意。ハイブリッド仕様車は、WLTCモードで1リットルあたり最高36.0キロという素晴らしい低燃費性能を達成しています。

 また、後輪をモーター駆動にする電気式4WD(E-Four)も用意されました。降雪エリアのユーザーにも選択肢の1つとして選んでもらえます。また、自動ブレーキなどの先進運転支援システムも最新のシステムを搭載。安心・安全面でも万全の内容です。

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