クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

「国民車」ヤリスクロス池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2020年09月21日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 ようやく。というタイミングでヤリスクロスを公道で試すことができた。すでに8月31日から発売されており、読者の中にもディーラーで試乗を済ませている人もいるかもしれない。

全体にクリーンで、かつしっかり個性的。柔らかい印象なのにSUVらしさも備えているデザインから、トヨタのデザイン力の進歩を感じる

オールラウンダー

 さて、7月27日の記事ではサーキット試乗会での印象をすでに書いているのだが、その時の感想を一言で言えば「オールマイティ」だった。この印象は公道で走らせてみても同じどころか、より一層堅固になった。

 ケチの付け所が極めて少ない。トヨタ肝煎(きもいり)のTNGAは、プリウスでデビューしたGA-C、カムリでデビューしたGA-K、クラウンでデビューしたGA-Lと続いてきて、大トリとしてヤリスで加わったのがGA-Bプラットフォームだ。開発が手慣れ、ノウハウが蓄積した分進化している。

 具体的には運動性と乗り心地に優れている。コンパクトでスッキリしたデザインながら、SUVらしく、ベーシッククラスとしてはそこそこ上級感も感じさせる。

 ヤリスより上背があるので、運転視界も向上している。シートもトヨタのひと頃のシートからは、とても想像できないくらい良くなっている。おそらく国内Bセグのシートとしてはベストだろう。

 原稿を書く側にしてみると非常に困るクルマだ。何か得意な芸があって、そこに集中して説明すれば伝わるというクルマではなく、オールラウンダー型の車両なので良いところを挙げていけばキリなく、それを全部書いていては冗長になる。かといって端折ると正確ではなくなる。正直だいぶ困っているのだ。できる限り論理的に説明を試みるが、今回は止むを得ず表現が文学的になるかもしれない。

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